Kyoto Shimbun 気になるリポート Kyoto Shimbun 1998.3.21 気になるリポート

「英国ブームが続く」ワケ

 最近、書店に並ぶ新刊本のなかに必ずあるのが、英国流の生活やエピソードなどをつづったエッセー形式の「英国礼賛本」だ。書物以外でも、ファッションや紅茶、ガーデニング(庭づくり)の流行など、さまざまな分野で英国人気が高まりを見せる。なぜ今、「英国」が魅力なのだろう。
(社会部 森山敦子)



 ガーデニング・ファッション・紅茶

 本物の豊かさ志向

 京都市中京区の会社員伊藤幸代さん(28)は、数年前から年に一回は必ず英国に旅行する、という英国びいきだ。ロンドンだけではなく、周辺の田舎町を訪れることも多い。 「民家の花壇を見たり、広がる牧草地の緑を眺めているだけで落ち着く。のんびりした空気が最高のリフレッシュになるんです」と、すっかり気に入っている。

英国を扱ったエッセー本は数年、
前から次々と出版されている  
 「クラブとか、バイトとかで毎日、結構忙しい。英国流に紅茶を楽しめるような、ゆったりとした時間の流れにあこがれる」と話す左京区の大学生小川美紀さん(21)は、もともと紅茶が好きで、英国に興味を持つようになった。

 英国ブームの火付け役となったのが、「イギリスはおいしい」(林望著、平凡社)をはじめとする一連の「英国エッセー」だった。一九九一年ごろから出版が始まり、今では常に五十冊前後が書店に並ぶ。長年、英国で暮らした研究者や作家、英国人と結婚した女性たちが、英国の生活ぶりや食事、庭づくり、王室など多彩な角度で、英国流の生活の美点を描いている。

 国民性や習慣に共通点

 なぜ、こんなに急に英国本が増えたのか。英国への留学、出張は二十五年前から通算十回以上という京都大の豊田昌倫教授(英語学)は「日本と英国は、ユーラシア大陸の東と西に遠く離れているにもかかわらず、島国という地理的条件や比較的無口な国民性など共通点が多い。これまで実際の姿が意外に知られていなかったぶん、情報が求められるようになっただけ」と話す。

 さらに、豊田教授は、お互いに皇室、王室を持つ歴史、古いものや伝統を大切にする習慣などの共通点を挙げ、「もともと日本には英国文化を受け入れる素地があった」と説明する。

 「バーバリー」など英国のブランド衣料品を扱う丸善京都河原町店でも、ニットなど秋冬物は英国製品の人気が高かった。「かたくなに自然の素材を守り続けている英国製品は、同じ黒でも色の深さや風合いが違うんです」と、店の浅野光彦さんは話す。着ては捨てる、というバブル時代を過ぎ、本物志向が見直される世の中に英国の暮らしがマッチした、というのだ。

 人気を背景に、英国留学も増えている。海外留学希望者の相談に応じるICS国際文化教育センター大阪支店(大阪市北区)によると、とくに昨年春以降、英国留学者が急に増えた。支店は「ダイアナ元皇太子妃によって、英国を身近に感じるようになったほか、ガーデニングやフラワーアレンジメントの流行で、カルチャーの面から英国に触れたい、という人が増えた」と分析している。

 それにしても、英国は本当に、そんなに理想的な国なのか。豊田教授は「英国の再評価は、日本が高度成長を通してモノを大事にする暮らしを捨て、米国流の消費社会にモデルチェンジした反動が現れたに過ぎない」と、過剰な英国賛美を戒める。「英国では、地下鉄のエスカレーターもいまだに木製。古いものを大事にする良さがある一方、社会的な効率性には欠ける。また、英国社会には階級の溝も、ぬぐいがたく存在している」と指摘し、こうした二面性を理解したうえで個人として英国流生活の豊かさを楽しめば、とアドバイスしている。

消費社会の反動?

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