Kyoto Shimbun 1997.12.11 気になるリポート

「インディーズブランドがはやる」ワケ


 インディーズブランドと呼ばれる洋服が京都で人気を集めているという。「映画の『インディ・ジョーンズ』のことかいな」。職場のおじさんからそんな声すら聞こえてくる。正解は、英語のインディペンデント(独立の)ブランド、企業などに属さない自主・独立ブランドを指す。

 型にはまらない自由なデザインが特徴だ。今秋、京都に初のインディーズ専門店もお目見えした。若手デザイナーが活気づいているのは、なぜだろう。

(社会部 松田規久子)


値段が手ごろ
売れ筋はダメ
「普通はイヤョ」
京らしさ求め 若者の新ファッション

 インディーズの「通」たちは、若者が音楽やダンスを楽しむクラブで開くファッションショーに集まる。のぞいて見ると、暗い室内にびっくりするほど大勢の人間がいる。アルコールとたばこを手にした顔はどれも若い。人垣の向こうを怠惰な表情を浮かべたモデルが歩く。服は想像していたほど過激でなかった。「三十歳の私にもついていけそう」と思った。

親類の家の2階を借りて服づくりする梅田友香さん。
ボタン付け一つにもこだわりがある(京都市右京区)
 ショーは、京都芸術短期大学の学生と卒業生が、デザイナーの卵たちを売り出すために開いた。インディーズブランドを扱う店のオーナーを招待しており、目に止まれば店頭販売の道が開ける。「S」のブランド名で服を発表した石原小百合さん(21)はインディーズデザイナー志望、ロンドン留学めざして働きながら服づくりを勉強している。

 京都や大阪の店から引っ張りだこのブランド「YUKA UMEDA」の梅田友香さん(22)も、成安造形短期大学に在学中から友人とジョイントショーを重ねてきた。

 彼女がめざすのは、売ってそうでどこにも売っていない服、着心地のいい服、どこかに京都らしさを感じる服だそうだ。満足できる服づくりのためにデザインから縫製まで一人で手掛ける。金銭的につらいことが多いが「企業内デザイナーになって、売れ線狙いの服を作りたくない」と自主ブランドの道を歩む。

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 インディーズの購買層は十代後半から二十代前半の若い人だ。京都市内の大学生前田文昭さん(20)は「ボタンの位置やえりの形など普通じゃないデザインが気に入っている。人があまり着ていないところもいい」と話す。スニーカーや時計の限定モデルと同様、希少価値を求める若者心理の現れなのか。

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 値段も重要な要素だ。デザイナーと店がじかに販売契約を結ぶ、デザイナーの卵は値段が安くてもあまり気にしない―などの理由で手頃な価格の服が多い。好きな服はアルバイト代で買うという京都市山科区の女子高生(16)は「欲しいと思っても値段が高いとあきらめる。デザインと値段が服選びのポイント」と、教えてくれた。

 とはいっても、大阪と比べて京都はファッション面で保守的といわれてきた。なのに、なぜインディーズがはやる?

 「インディーズ出身の若手デザイナーを積極的に取り上げた『藤井大丸』改装の影響が大きい」。インディーズや輸入服を扱う守繁美加枝さん(40)の分析だ。大阪市に住むインディーズ好きの大学生西本和志さん(19)も「以前は大阪で服を買っていたが、今は京都の方が買いやすい」と話す。京都のインディーズ専門店はターゲットを流行に敏感な一部の若者だけに絞ってはいない。間口の広さと流行と少し距離を置いたデザイナーの姿勢が、魅力を作り出しているのか。

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 インディーズから出発し先日、開催された大阪コレクションにも参加したデザイナー佐々木純也さん(26)袖都市下京区造蓮峙都は情報量は少ないが、自分を見失うことなく創作に打ち込める居心地の良さがある」と指摘する。「ANTS NEST」ブランドのデザイナー北野嘉子さん(21)も京都にこだわり、若手デザイナーを集めた京都コレクションの開催を計画している。インディーズを足がかりにして、京都のファッション地図は変わりつつある。



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