| 「120円缶飲料が負けない」ワケ | |||
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缶コーヒーなど自動販売機向けの缶飲料の希望小売価格が今春、1缶120円に値上げされた。しかし、街角には110円に値段を据え置く自販機があれば、今だに100円でがんばる自販機もある。同じ商品なのに、高い自販機もしっかり売れている。量が倍も違うのに同じ120円で売られる商品もある。摩訶(まか)不思議な缶飲料自販機の値段の決まり方を探った。 (社会部 岡本 晃明)
自販機 缶飲料業界の最大手はコカコーラ・グループ。近畿コカコーラボトリング(大阪府摂津市)を訪ねると、今回の缶飲料の値上げは▽昨年の消費税五%導入時に価格転嫁を見送っている▽原料など諸経費の上昇―が理由という。宝酒造(京都市)に聞いても、理由は同じだ。「値上げの先頭はよう切りませんが、他の大手の値上げのタイミングを見てたのは事実」と話し、追随したことを隠さない。 自販機には、飲料メーカーが場所代を払って設置する「フルサービス」と、小売店が自販機のリースを受けて設置している「レギュラーサービス」の二つの形態がある。業界では「自販機は定価販売、定価はコカコーラが決める」のが長い間の常識だった。今回は、希望価格値上げにレギュラーサービスの小売店の一部が「反乱」しているかっこうだ。
設置場所が左右
消費者行動
京都市東山区に110円の自販機を置いている男性(70)は「近くのスーパーとの対抗上、うちは値を上げない。10円の違いでも喜んでくれるお客さんがいるしねえ」。中京区で80円から120円の自販機を置く米穀店によると、「100円の缶を買いに遠くから来る人もいるが、120円の商品も売れ行きはまったく同じ」と話してくれた。 100円自販機を置く別の酒屋も訪ねた。「メーカーは120円に値上げしろとうるさいのでは」と水を向けたが、「そういうのもあるし、近所で心良く思っていない人もいる。話をするとまずいんです」と言葉は少ない。表向きは「あくまで120円は希望価格」と静観するメーカー側も、水面下では横並び圧力をかけているのは間違いない。 飲みたい物 あれば選ぶ 自販機業界のマーケッティングを研究した神戸大経営学部の石井淳蔵教授の分析はこうだ。 「自販機の缶飲料は『その場消費』。衝動買いだから、商圏が非常に狭い。経済学でいう『一物一価の法則』は確かに成立していないが、道を一本渡る買い物コストが10円と考えると、消費者行動を説明できる」 メーカー側も、自販機が売れるか売れないかの別れ道は、値段ではなく、設置場所だということを知っている。だから、人通りの多い場所に自社の自販機を何台置くことができるかに、しのぎを削ってきた。 自販機の現状について、メーカー自身も「設置は、もう飽和状態」と認める。だから、自販機のどの位置のボタンがよく押されるのか集計したり、消費行動をコンピュータで分析し、どういう商品をどう並べれば売れるかを決めている。飲みたい時に飲みたい物が目の前にあることが、10円、20円の値段の差に勝るとの確信が背景にある。 まだ、疑問はある。清涼飲料のなかには、同じ商品の250ミリリットル缶と350ミリリットル缶、たまに見かける500ミリリットル缶さえも同じ120円で売られる商品がある。量は違うのに値段は同じ。これは、「買い物コスト理論」でも説明できない。 近畿コカコーラボトラーズは「量が違うだけで、中身は同じ。製造コストは1本当たり1円も変わらないから」と説明する。一方、宝酒造は「同じ値段で量が違う以上、商品の質に差をつけている。でないと、お客さんに説明できない」。どっちが、どうなんだ。いずれにせよ、コストに缶の中身代が占める割合はかなり低いらしい。 日本人は昨年、1年間で1人当たり約百160本も缶ジュースを飲んでいる(全国清涼飲料工業会調べ)。1本120円とすると、1人の出費は2万円近い。中身のジュースやコーヒーではなく、宣伝費や物流コストにどれだけ支払っているのか。そう思うと、急にのどが乾いてきた。
●●●小売店、メーカー思惑交錯 |