| 「最近漢字が元気な」ワケ | ||||||||
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(社会部 松下亜樹子)
試しに、商品名に漢字が使われているものを集めようと、京都市内のコンビニに出かけた。 あるある。例えば菓子では、夏季限定の「南の果樹園ポッキー」、「夏」と特大の字が躍るポテトチップス。清涼飲料水「桃の天然水」、缶ビールには「燻(くん)製麦酒」「気分爽快(そうかい)」。カップめんでは「龍麺(めん)」や「丸鶏濃厚」「麺屋佐吉」がある。「北海道濃縮乳使用」と、原材料をそのまま商品名にしてしまったアイスクリームもあった。 手始めに、ポッキーの製造元、江崎グリコに聞いてみた。「南の果樹園ポッキー」はキウイやマンゴーを使ったトロピカルフルーツ味だ。 なぜ「トロピカルポッキー」ではないのか。「確かにそういう案もあったんですよ」と広報担当者は明かした。「でも、漢字の方が何となく『おいしさ感』が伝わるでしょう」 色とりどりの果物が実る南の島の果樹園。それが、味の想像をかき立てるというわけだ。
不況下…神通力に期待 キリンビールが三月に発売した発泡酒は「麒麟淡麗・生」。実に総字画数は七十八画、味は淡くても、商品名は超ヘビー級だ。「高級感と本格志向を打ち出した。おかげさまで売れ行きは上々です」(広報部) 「丸鶏濃厚」(エースコック)は、こってりスープの特徴をそのまま名前にした。「麺屋佐吉」(サンヨー食品)は庶民的で、昔気質(かたぎ)のラーメン屋をイメージした、という。「『吉』の字は縁起もいいんですよ」と担当者は自信たっぷりだ。 漢字が持つ質実さ、独特の表現力、はたまた神通力まで。不景気でモノが売れない昨今、なんとか消費者の気を引こうとするメーカー側の工夫のようだ。 漢検受験100万人突破 「一時的なブームじゃない。漢字の復権ですよ」と意気込むのは日本漢字能力検定協会(本部・京都市)だ。「漢検」の受検者は昨年度、百万人を突破した。ワープロ慣れした現代人がもう一度、漢字を見直し始めているのだという。 漢字のクロスワードパズル専門誌も登場し、昨年ごろから人気に火がついた。四文字熟語を組み合わせたり、「へん」から「つくり」を類推したりしてマス目を埋める。季刊、隔月刊など約十誌あり、読者層は三十―五十歳代。「お金をかけずに『自己啓発』できる点が受けている」と、雑誌「漢字クロス」(公称十三万部)の岩尾収蔵編集長は話す。 気になりだすと、街を歩いていても漢字が目につき始めた。イタリア料理店の日替わりランチも、カタカナでなく「南欧風鰈(かれい)と季節の野菜の重ね焼き」なんて書いてあるし、書店に並ぶ本の表紙も、題字を大きく据えたものが目立つ気がする。 先月、小学館から刊行されたサッカーの呂比須ワグナー選手の自叙伝は、ずばり「呂比須」。表紙の大半を迫力ある極太の文字が占めている。ベストセラーとなった「脳内革命」も同様で、ビジネス書にこういう傾向が強いようだ。 タイポグラフィー(印刷文字表現)に詳しい京都芸術短大専任講師の佐藤淳さんは「漢字は説明くさく、声に例えれば、大声で怒鳴るような効果を生む」とみる。その押しつけがましさが受けている?「いや、大して変わらないモノを良く見せる方便でしょう。むしろ、最近はネーミングも日常語も安易に流れ、幼稚化している。これも経済が停滞してるせいですかね」 なんだか、複雑なカンジ…。
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