|
男が「きれい」にこだわるワケ | |||
|
最近、街で若い男性を見て「きれいだな」と思うことがある。うっとりするわけではない。髪形はもちろん、まゆの形、顔の肌、ときにはスネ毛まで手入れが行き届いている。「よくやるなあ」と感心してしまう。年代は高校生から二十代前半。自分よりも少し若い人たち。どうして「きれい」にこだわるのだろう。 (けいはんな総局 沢田亮英)
反応楽しみ 人それぞれ
今月十五日、京都市下京区の阪急百貨店で「メンズマニキュアデモンストレーション」というイベントが開かれた。つめの手入れのプロが、二人の男性モデルに「つめの化粧」をする様子が紹介された。 新聞広告を見て応募し、モデルとなった高校三年生、佐藤昌道君(17)=京都市北区=は、銀色と黒色のヒョウ柄に仕上がったつめを見て「芸術品ですよ。自分じゃこんなきれいにできない」と興奮気味に言った。 「まゆの手入れは中学生、マニキュアは高校に入ってすぐに始めた」という。「友達に勧められた」のがきっかけだった。「最初は興味本位。でも、一回やると、まゆでもつめでも手入れした形じゃないと落ち着かない。それに、何か新しいことを試したときの周りの反応が楽しみ」。 ただ「大学を出て働くころにこんなことやってたらバカですよ。今しかできない」。女性用のシャツを着こなす彼が「心のカリスマ」にしているのは、女性歌手の「NOKKO」だという。 そんな佐藤君が「しようとは絶対思わない」と言ったのが「脱毛」。だが、いろんな理由で顔のヒゲやスネ毛を「永久脱毛」する人が増えている。 「スネ毛はイヤ」と彼女に言われ 男性専門のエステティックサロン「ダンディハウス京都店」(京都市中京区)の大崎美佐店長(27)は、エステティシャンとなって九年。「仕事を始めたころは、おなかを引き締めたいという四、五十代の人が多かったんです。最近は、月四百人ほどのお客さんの七、八割が二十代ですね」 中心は大学生や営業マン。「交際中の彼女にスネ毛がイヤと言われた」「営業に回るときの顔の印象を良くしたい」などといった理由が多いという。中には「体育の授業で短パンになったとき、スネ毛を友達にからかわれた」ために通い始めた高校生もいるとか。それぞれに悩みは深刻なようだ。 おしゃれとして楽しむ人や悩みを解決したい人。「きれいになりたい」という願いの中身は人によってさまざま。今は、充実した商品やサービスの中から、願いを叶えてくれるモノを気軽に選ぶことができる。 一度始めるとやみつきになる 「若い男の子を狙ったマーケットの戦略ですよ」 「美人論」で知られる井上章一・国際日本文化研究センター助教授は「化粧品などの美容産業は、女性を踊らせてもこれ以上マーケットは広がらないとみて、若い男性をターゲットにした。その戦略が成功しているのでしょう」と少し冷ややかに分析する。確かに、まゆを整える道具のセットや、体の手入れマニュアルを紹介する雑誌もあり、それらはコンビニで買える。 いつかは男の化粧も当たり前の時代がくるのか。「そんな時代は暮らしにくいでしょうね」と井上助教授。「美人という言葉には、性格、知的、健康なんていう言葉がつく。でも、“美男”には何にもつかない。○○美人は、動きや雰囲気をとらえて、どの女性も美人の枠に入れようといろいろ気を使うから生まれる欺瞞(ぎまん)的な言い回しなんです。化粧をしない男がおかしいとなって、男同士で相手の美しさに気を使い、美男にも修飾語がつくような時代はうさんくさいでしょ」 自分がマニキュアを塗り、まゆを整え、脱毛をするとは想像できない。ただ「一度始めるとやめられない」(佐藤君)という言葉には妙に説得力があった。 |