Kyoto Shimbun 1998.9.14 気になるリポート

「ペットが現代病で悩む」ワケ

 「ミーちゃん、ただいま」と仕事から帰ったお父さんが愛猫に抱きつくと、「やめてくれよ」とばかりにかゆがって、逃げ出してしまう。これは人間のふけやほこりに、アレルギー反応を起こしているから。かつては犬のふけで、人間がじんましんになったのに。花粉症や糖尿病、アトピー性皮膚炎、心因性の異常行動…現代人がかかるのとほとんど同じ病気に、ペットが悩まされている。「いい子いい子」と頭をなでている間にも、ペットの体はむしばまれているのだ。あなたのワンちゃん、ニャンちゃんは、大丈夫?

(社会部 脇坂純一)

動物病院を訪れるペットの多くは、人間と同じ現代病に悩まされている(京都市西京区・ダクタリ動物病院)

 何かとストレス多いんだ

 京都市右京区の主婦薗田さき子さん(33)が飼う中国産シーズー犬「プーちゃん」は、生後二年半のかわいい盛り。だが昨年春ごろから、顔や足をひどくかゆがるようになった。

 診断は「花粉その他の吸引アレルギー」。スギ花粉だけでなく、自動車の排気ガス、家のほこりなどに反応するという。

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 薗田さんは毎日、家の中を徹底的に掃除している。それでも散らかる子供部屋の中に、プーちゃんは入れない。長女の恭香ちゃん(7つ)は、家に帰ると必ず着替えてから、プーちゃんを抱っこする。「私より清潔にしてないとダメなの」と同情する。

 プーちゃんのために、薗田さんは引っ越しすら考えているという。部屋の空気を換えようとしても、窓を開けると近くの道路から車の排気ガスが入ってくるからだ。

 いま、動物病院には実にさまざまな病気のペットが連れてこられる。京都市西京区の「ダクタリ動物病院」も、その一つ。最近の病気で多いのは、アトピー性皮膚炎や歯槽膿漏(のうろう)、糖尿病、がん、食べ物アレルギーなど、現代人を悩ます生活習慣病や高齢者の疾患、アレルギー症の類だという。

 院長の森尚志さん(41)は「単に動物の病気、と考えていては対応できない。常に人間の症例と照らし合わせる作業が不可欠ですね」と話す。

 京都市獣医師会長で、四十年近い獣医歴を持つ串田寿明さん(68)は、開業当時との違いを指摘する。「昔は、動物病院に来る犬といえば、ほとんど伝染病だった。アトピー性皮膚炎なんて、学生のころには『動物にはない』と教わったくらい」

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 ある日、串田さんのもとに一匹の柴犬が連れてこられた。「大便が出ないんです」と飼い主。肛門を見ると、二、三センチ大のニワトリの骨が引っ掛かっていた。「犬は本来、骨なんか一、二時間で溶かす消化能力を持つもの。それができなくなっている。病気というより、体そのものが弱っているのでは」と串田さんは話す。

 主人リストラ転職で孤独
 神経症(心因性の自傷行為)のだいすけ君

 ストレスの多い現代社会が、ペットたちに影響を及ぼしてもいるようだ。

 京都市北区の主婦(48)が飼うシャムネコ「だいすけ君」は最近、右前足をしきりにかむようになった。銀色の美しい毛が、血でにじむこともある。病院で診てもらったが、体に異常はみられない。結局、「心因性の自傷行為」と診断された。

 会社員の夫(51)がリストラで転職。給料が減ったため、主婦はパート仕事に出るようになり、だいすけ君は、家の中で独りぼっちになっていた。

 だいすけ君は、家族環境の激変にストレスを感じ、「分離不安」と呼ばれる神経症に陥っていたのだ。不況の嵐は、ペットまでも巻き込んでいる。

 南区内の動物病院に勤める獣医(35)から、面白い話を聞いた。最近、犬のしつけが全く出来ていない飼い主が多いという。かわいいから、しからない。そんな飼い主を見て、犬は自分が一番のボスだと思ってしまうらしい。

 現代の人間社会がペットの病気や行動に反映されているとしたら、近い将来には「キレる少年」ならぬ「キレる犬」が増えるかもしれない。

ニャンともかなワン


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