Kyoto Shimbun 気になるリポート  Kyoto Shimbun 1998.2.27 気になるリポート

「ただほど
   高くつく
」ワケ

 昔から「ただほど高いものはない」という。無料進呈や無料体験といった宣伝文句につられ、利用すると逆に大金を取られた、という話はよく聞く。一方、世の中、意外に役立ち、得な「無料」も多い。なぜ、同じ「無料」なのに違うのか。「損する無料」と「得する無料」の差を考えた。

(滋賀本社・三好吉彦)


損得の見極め 重要に

ティッシュは消費者金融会社だ
けで、年間10億個が「無料」で
配られている(JR大津駅前)
 最近、抜け毛が気になり出した大津市の男子学生(24)はある日、「髪の診断、相談を無料でします」とPRする店を訪れた。学生は「気軽に相談に行っただけ」だったが、実際には、診断と相談はごくわずか。後はしつこく高額商品を勧誘された、という。

 「分割払いの説明などを延々とされ、契約する気もないのに四時間も拘束された。無料に乗せられた僕も悪いが、二度と行くものか」と怒りの発言。

  強引な勧誘
 “無料”に隠れる

 京都市のOL(23)は昨年、「無料エステを体験しませんか」と電話を受け、訪れたところ、カウンセリングと銘打つ勧誘攻撃にあった。あまりのしつこさに結局、九十万円の脱毛エステを契約し、後で支払いに困った、という。

 京都府消費生活科学センター(中京区)によると、無料体験や無料進呈をPRして客を呼び、強引な勧誘などで商品を売りつける「無料商法」はほかに、健康食品や化粧品、フィットネスクラブなどの勧誘で多い、という。

 しかし、これら商法、企業からすれば、よほど悪質なものを除き、正当な宣伝・勧誘活動といえ、同センターでも「上手い話はないと認識してもらうしか…」。こんな目に合ったら「ただほど高いものはない」と感じるのもうなずく。

 消費者が「得している無料」も結構、多い

 例えば、街でもらえるポケットティッシュ。ある消費者金融業会社は年に七億円をかけ、全国で五千万個をばらまく。広報担当者は「うちの業種だけで、年十億個はまいている」といい、テレクラや居酒屋などまでも。手にした主婦は「スーパーで買い込むより、街でもらい集める方が得かも」と笑う。「チリも積もれば山」というわけだ。

 工場限定のオリジナル・ビールをぐいっと無料で飲めるキリン京都ビアパーク(南区)。日本庭園を眺めながら飲む一杯は格別で、毎日のように通いつめ、ビールを飲み続ける強者男性もいるとか。

 百貨店など食料品売り場での試食は、O157の影響で種類、量が少なくなったが、まだまだ「食える」。京漬物の大安本社店(左京区)では、「京料理の盛りつけの見本になれば」と陶器に美しく盛られた千枚漬けなどを無料で頂ける。

 そのほか企業のショールームなどへ行くと、無料でもらえたり、体験できたり。「得する無料」は多い。

 「損する無料」と「得する無料」の違いは?

 府消費生活科学センターによると、苦情の多い「損する―」は無料で客を引き寄せ、「消費者の商品選択の自由を奪う販売法」に多いという。ならば、逆に「得する―」は「消費者が無料でもらって、後は自由にノー天気に振る舞えるもの」になるだろう。

 すなわち、「得する―」は頂いただけで逃げられるが、「損する―」は飛んで火に入る夏の虫にもなりかねないケース。無料に隠れたセールスプロが、高額商品を用意、高度な勧誘テクニックで消費者は逃げられずに損をするわけ。

 首都圏の無料スポットを探検、紹介した「TOKYO無料生活ガイド」(情報センター出版局)の著者・雀部俊毅さんは、上手な無料の使い方を「利用前にまず多くの情報を仕入れ、なぜ無料か、しっかり理由を見極めるのが大事。勧誘にあっても相手のペースにはまらず、嫌ならきっぱり断ること」とアドバイス。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 一方、関西学院大社会学部の津金澤聰廣教授は「一見、無料でも、企業はしっかり減価償却して、金を消費者から回収する。消費者が無料自体のいかがわしさを理解して、逆にそれを楽しむ余裕が欲しい」と話す。

 無料を上手に活用したい消費者と客を呼び込みたい売り手。せめぎあいは続く。


▲INDEX▲