Kyoto Shimbun 1998.5.13 気になるリポート

「小学生が集団登校しない」ワケ
 小学生たちがにぎやかに通学路を急ぐ朝の風景が戻ってくる。でも、近くの新一年生は真新しいランドセルを背負って一人で歩いている。児童の登校といえば、班ごとに固まって歩く「集団登校」ばかりと思っていたが、京都市内では集団登校をしない小学校も増えているそうだ。慣れない道を行く小さな背中が、不安そうに見えて仕方ない。
(社会部 宮部真典)


 安全な集合場所ない

バラバラに歩いて通学する児童
たち。安全な通学方法をめぐっ
て意見は分かれている(京都市
左京区)          

 三年生の男子児童がいる左京区の母親(36)は、子どもが入学した時、少し心配になった。当たり前と思っていた集団登校が、子どもの通う小学校ではなかったからだ。

 「家の前の道は、一人で歩かないように注意されるような寂しい道です。一人で大丈夫かな、と」。最初の一カ月間は近所の六年生が迎えに来てくれたが、その後は友達を誘って登校するようにした。「今は慣れたけど、女の子の親は心配なのでは」と話す。

 京では半々

 市教委調査課によると、集団登校をしているのは、市内百八十一の小学校のうち九十六校(昨年度)で、全体の五三%しかない。最近の四年間では九五年度の五七%を最高に、微減状態が続いている。

 左京区の岩倉南小は、朝八時半までに児童がバラバラに歩いて登校する。指定された通学路で出会った友達と一緒の児童もいれば、一人で歩く児童もいる。学区内には人通りの少ない山間部もあり、ある母親(42)は「痴漢騒ぎがあった時は心配になり、防犯ブザーを持たせた。親同士で子どもに誘い合うように話している」と打ち明ける。

 集団登校をしていない理由を久保昌史校長は「安全意識は個人で身につけることが基本。それに、家を出る時間など家庭ごとに生活習慣も違う。集団登校はおしゃべりして歩く時間が長くなり、かえって危ない面もある」と説明する。

 少子化で班組めず 事故なら被害大

 集団登校が減ってきた理由について、市教委は▽子どもの数が減り、町内で班を組むことが難しくなった▽適当な集合場所がない▽交通事故があった際に被害が大きくなる―と分析している。向井宣生課長は「集団登校は上級生のリーダーシップの育成や縦割り構成によって異学年間の交流が深まるという教育的意義も高かった。しかし、児童の安全が第一。学校周辺の環境などを考慮して各校長が最終的に判断している」と現状を説明する。

 やはり集団登校をしていない中京区の高倉小は「安全な集合場所がない」のを一番の理由に挙げる。学区内は細い道が碁盤目状に走り、交通量も多い。ほとんどが一方通行で、児童が車と正面から向き合えるように、登下校で道順を反対にしているほどだ。

 井口隆勇校長は「十分間でも、児童が安全に待てる場所がない。道も複数で歩けば危険」と話し、「最初は不安だったが、自由でいいと思う。八時に集合といわれても、ウチの子は起きれないし」という母親(43)の声もあった。

◆ ◆ ◆

 集団登校を行っている学校は、「低学年の児童の安全のため」「縦割りで遊ぶことが減った今、地域の団結につながる」「一人で歩けば変質者などから狙われやすい」を理由に挙げる学校が多い。事故に対しては単独登校の方が、事件に対しては集団登校の方が危険性が低くて安全―という側面もある。

 京都教育大の村上登司文助教授(教育社会学)は、「今後も、子どもが被害に遭う事件が増えれば、英米のように低学年の児童は親が送り迎えをするようになるかもしれない。集団登校が減ってきたのは、集団登校に適応できない児童や、集団登校させたくないと思う親が増えた側面もあるのでは」と指摘している。

 集団登校か、バラバラ登校か。どちらの通学方法も短所と長所が深く絡み合うため、学校側も悩みながら選択している、というのが実情のようだ。

学校も悩む選択


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