Kyoto Shimbun 1997.10.20 気になるリポート

「ワインが飲まれる」ワケ

 酒税法改正によるウイスキーの値下げなど、何かとにぎやかなお酒の世界。その中で実は、ワインが史上空前のブームを迎えている。

 「あのボジョレー・ヌーボー以来の右肩上がり」と業界の鼻息も荒い。聞けば、これまでとは違うワインの飲み方を楽しむ人が多いという。左党の記者が京都の北から南に探ってみた。

(舞鶴支局・河端淳)


 安 く て
 健康志向
“寝間着”感覚で気軽に
「赤」が圧倒的人気

 京都市下京区の百貨店。地下の和洋酒売り場には、約400銘柄のワインが並ぶ。「対前年比で2、3割は伸びてますよ。先月なんか4割増し。まだまだ行きそうですね」。売り場の店員の顔がほころんだ。

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 ワインが伸び出したのは1994年ごろからという。一体どんな人が、飲むようになったのか? 京都市北区の主婦坂根ゆかりさん(30)は3年前から、それまで飲まなかったワインを、1日1本ペースで自宅で楽しむようになった。海外直販で市価より安くまとめ買いできることを知ったからだ。

深紅のワインが注がれたグラス
向こうに談笑が広がる(京都市
中京区のワインバー)    
 ワインといえば、レストランで高いものを頼み、格好よく飲むイメージ。でも坂根さんは「『寝間着で飲む』感覚で気軽に楽しみたいのよ」。自宅でチーズなどを用意して、皆でワイワイ飲むのがいいという。

 実際「ギフトでなく、自宅で飲むからと、お手ごろ価格で質のいいものを求められる人が圧倒的」と百貨店の店員。京都府舞鶴市内で購買層の中心といわれる若い女性数人に聞いたが、いずれも「家で料理と一緒に飲む」「友達と集まって飲む」との声が圧倒的だった。

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 その支えになっているのが、昨年から目立つチリや南アフリカなど日本へ新規参入組のワインだ。「1,000円―3,000円の低価格で、味もそこそこ」(舞鶴市の酒販売店)。3年前からの円高による価格の下落に加え、技術の向上で長い船旅でも品質が変わらないようになったのが、市場に出回ってきた理由という。国内メーカーも、初心者向けの安くてくせのないワインに力を入れている。

 あちこちの酒販売店で聞くと、出回るワインの7割は赤という。「特に赤の甘口。健康のことを口にする人がほとんどで、8月には在庫がなくなりました」とは、無添加ワインを売る京都市伏見区の食料品店「にんじんくらぶ」。

 酒類メーカーのメルシャン(本社・東京)によると、赤ワインに含まれるポリフェノールという天然物質が、動脈硬化の予防や抗ガン作用に効果があるという。フランス人が動物性脂肪の摂取率が高いのに、心疾患による死亡率が低いのは、ワインを飲んでいるから―という報告もある。

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 このワインブームに、国内の農業関係者も熱い視線を送る。特産ワインの商品化をめざし、京都府宮津市でブドウの栽培やワインの試験醸造に取り組む「たんごワインを造る会」の山崎浩孝代表(37)は、「ブランドにこだわらず、おいしいワインを楽しむ今の風潮なら、100%丹後産のブドウで飲みやすいワインを作れば、きっと受け入れてくれる。栽培農家の拡大にもつながる」と意気盛ん。来年から本格的にワイン醸造に乗り出す構えだ。

 今のワインブームは「非日常の場でうんちくを傾けながら飲む」から、「生活に根づいた大衆の飲み物」に変わる一歩のように思える。

 約1,000銘柄のワインをストックする京都市北区の小仲酒店の小仲康夫さん(62)は話す。「生活を豊かにするのがワイン。ブランドに流されず、自分で飲み比べてほしい。色を見て、香りをかいで、味わえば、素晴らしい世界が広がる。ロマンがあるよ」。思わずよだれがこぼれてきた。

丹後産も醸造へ



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