Kyoto Shimbun 1997.10.16 気になるリポート

「若者が胃腸を患う」ワケ

 十代から二十代の若い人の間で、胃腸の病気が増えているそうだ。しかも、十二指腸潰瘍(かいよう)をはじめ、聞き慣れない「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」といった難治療の患者も多い、という。
 伝染はせず、手術しなくても薬である程度は回復する。でも、元気盛り、遊び盛りの世代がなぜ、胃腸を患うのだろう。

(社会部 松下亜樹子)


 潰瘍性大腸炎
 クーロ ン 病
受験や就職、結婚…
ストレスですわ

 京都府向日市の主婦、内本智子さん(30)はOLだった21歳の時に突然、潰瘍性大腸炎にかかった。鈍い腹痛と下痢が始まり、3カ月入院した。「前日まで何ともなかった。どうして私が、と驚きました」

 潰瘍性大腸炎は、腸の粘膜が炎症を起こす。1984年には人口10万人あたり7.9人だったが、92年には24.4人と8年間で3倍以上増えた。今のところ原因不明で、治療法も確立されていない「特定疾患(難病)」だ。

 内本さんは発病当時、保母に転職しようと勉強中だった。入院は資格試験の数日前、以来9年間、炎症を抑える薬を飲みながら通院している。

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 皆川文子さん(38)=京都市東山区=が発病したのは28歳の時、結婚直後だった。新婚旅行から帰りすぐ症状が出た。5年間で4回入院した。「勤めていた会社が急成長し、結婚前は男性以上に働いた。急に家庭に入り『いい嫁にならなければ』という思いも強かった。その途端でした」

本人が気づかないまま、ストレスは若者
の胃腸を直撃している(京都市下京区の
JR京都駅ビル大階段)       
 小学5年生で発病した例もある。彼女は有名中学への進学を目指し、受験勉強の真っ最中だった。就職活動の学生、社会人1年生が発病するケースも多い。

 伏見区の理容師(26)は、20歳で十二指腸潰瘍になった。薬で治ったが、2年後「おなかが裂けそうな」痛みに襲われ入院した。クローン病と診断された。

 クローン病は炎症が腸粘膜のより深い部分に達し、やはり原因不明の難病だ。84年には10万人あたり1.9人だったのが92年には7.3人に急増した。

 理容師は、理髪店で見習いをしていた。お客が引けた後も深夜まで技術講習を受け、おなかがすくとスナック菓子や油っこい物を食べ、ペットボトルのジュースをよく飲んだ。

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 消化器系の病気に詳しい京都予防医学センターの多田正大医師は「結婚や就職など人生の転機ともいえる時期に発病する人が多い。精神面の影響が大きいのが特徴。ファストフードや肉類、油っぽい食品を好むなど食事の偏りも病気の悪化の要因だ」と指摘する。

 胃腸病は、今や働き盛りの世代特有の病気ではないのだ。センターには潰瘍性大腸炎やクローン病の患者約250人が通う。発病すれば薬と食事療法で症状を抑えつつ、何年も病気と付き合わねばならない。

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 ストレス解消や職場の環境を変えることで症状が好転したという例もある。潰瘍性大腸炎で13回の入院歴がある伏見区の女性(29)は、好きな歌手のコンサートを欠かさず、気分転換している。「公演が近づくと、いつの間にか回復するから不思議ですよね」。外勤から内勤に変わり、症状が軽くなった会社員もいる。内本さんは保母になる夢はかなわなかったが、結婚して育児に専念し体調は安定している。

 「病気になって初めて、ストレスをためていたのに気づいた」。患者たちは一様に話す。現代社会は質、量とも昔とは比較にならないプレッシャーを若い人々に与えている。


 特定疾患 厚生省が指定した、原因不明で治療法が確立されていない、後遺症を残す恐れのある病気。潰瘍性大腸炎、クローン病、クロイツフェルト・ヤコブ病など計38疾患あり、患者数は潰瘍性大腸炎が最も多い。医療費は公的な補助を受ける。


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