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北山に、春がようやく届いた。草や花、山の生き物、里人の表情もやわらぐ。


   


陽光にキラリ、野生躍る

 陽光が、木々をぬって深い谷を照らす。底の暗がりに獣の気配。京都府京北町の灰屋川。カメラに気づいたシカが身をひるがえし、ゆっくりと沢を下りはじめた。

 夢中で追う。足に雪解けの水が冷たい。新芽をついばみ、振り返るシカの息づかいを、身近にとらえた。

 奥深い山で餌をさがす動物。食害を嘆く里人たちも、かつては野生の動物に憧れた。京都市左京区広河原の松尾幸八さん(59)は15年前、初めてシカに遭遇し、美しい姿に感動したという。

 キラッと光るシカの瞳。行き交う鳥の声でわれに返った。ひだまりを抜け出たシカが、駆けていった。

 北山に、春がようやく届いた。草や花、山の生き物、里人の表情もやわらぐ。



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