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「来年もとちもち頑張ろう」。ススキを揺らす風の中で小滝さんの言葉が弾む


   


ススキなびく川辺、喜び巡る

 一面のススキの穂が、傾きかけた陽(ひ)に白くまぶしい。京都市左京区の久多川沿い。水辺で小滝昭子さん(72)が黙々とトチの実を洗う。朱色に染まった山が里に影を伸ばし、水や風は手に冷たい。一瞬、光が手元を照らす。

 物の乏しい時代、トチの実は餅の増量材として重宝された。小滝さんは毎年谷の奥で採り、洗って天日に干し、雑木の灰であくを抜く。「嫁ぐ前、母から教えてもろたんや」。今年も昨秋の実を使ってトチ餅を夫婦でついた。

 あかぎれの手をこすり合わせ「都会で暮らす孫に配るん」。喜ぶ顔を思い浮かべ、照れくさそうに笑った。

 秋−時が駆け足のようにゆく。北山は、森も川も、空も人も、いろどりと実りの刻(とき)を迎える。



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