NO6


真剣な表情で化粧を受ける神楽の男。一筆一筆、役がだんだんと乗り移ってくる


   


最後の祭り 里に残る記憶

 白く塗られた肌に墨や紅を吸った筆が走る。民家で男たちの身支度が進む。美山町田歌の八坂神社祇園例祭(府登録無形民俗文化財)に無病息災、五穀豊穣(ほうじょう)を祈って踊りや太鼓を奉納するのだ。

 祭の最後で登場する後藤章さん(44)は、大工が本業。ひときわ滑稽(こっけい)なしぐさで参拝者を沸かす「樽負(たるお)い爺(じい)」を11年間演じ、今ではクライマックスに欠かせない存在。25歳で田歌に入ったが、なかなか里に馴染めず、「祭りに出てみないか」と声をかけられた時は胸がいっぱいになった。

 今や里人になりきった後藤さんだが、この盆明け、実家の事情で九州に帰る。7月、万感の思いを込めて踊った。垂れた頭に、拍手がいつまでも降り注いだ。夏はゆき、人は去り、山は残る。(「魅せられて−夏」編おわり)



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