Kyoto Shimbun 2002.12
哲学の道−京都を歩こう−


 冬の京都を気のむくままぶらりと歩く。できれば平日、人通りの少ない道を、柔らかな冬のこもれ陽を浴びながら−が、お勧めだ。今回は京都の散歩道として代表的な「哲学の道」をゆったりと。ただし、ちょっぴり“歴史と日常”を味わいながら。(メディア局編集部 行司千絵 写真 山中茂)

 哲学の道。左京区の銀閣寺から若王子神社前までの約2キロの小道をさす。琵琶湖疏水分線西沿いで、今の季節はサザンカの花が美しく咲いている。

 まずは足利義政が文明(1482)年に隠居生活を送るため、山荘として建てた銀閣寺前からスタートしてみよう。東側に「幸せ地蔵」として知られる弥勒院が見えてきた。川を渡ってのぞくと、「幸せになりますように」などと書かれた護摩木、お守りなどが置いていある。お参りしてから、南へと足を伸ばす。



▽冬の散歩道

 哲学の道は、休日ならごった返すが、平日になると思いのほか、人通りは少ない。川に沿った細い道を歩いていると、犬を散歩する人や、ジョギングをする人など、普段の京の暮らしに少し触れることができる。道沿いに数カ所、ベンチがあるので、腰をおろして水面をながめていると、恋人同士が冬の休日、川でゆっくりと過ごす情景を描く短編を思い出す。

  鴫が鳴いている。  川はさらさら流れている。

 一郎がわたしの頭の上でビールを飲んでいる。

 川は淀みなく深く浅く流れている。

 わたしは一郎の膝にもたれてじきに眠ろうとしている。

 川は流れてゆく。

 どこまでも、ゆっくりと、流れてゆく。(川上弘美「川」より)

▽悲しい歴史

 だが、この「哲学の道」には悲しい歴史が秘められている。

 木下さんの父は画家で、自宅は戦前戦中、京都大生らが集まり、文化的サロンとなっていた。幼稚園児だった木下さんは学生らにかわいがられたという。「学徒出陣を前にした京都大生たちが、当時あこがれていたドイツの話をしてました。そして、ネッカーという川の向こう岸に『哲学の道』というのがあって、学者や学生がよく散歩をし、その感じがこの疏水べりの道に似ていたことから、『哲学の道』と名づけるようになったのです。学生たちはドイツに憧れながらこの道を歩き、そして戦場へ行き、多くは帰ってこなかったのです」

▽茶店や湯豆腐店も

 哲学の道には、大文字送り火の如意ヶ岳の東南に位置する法然院、狛ネズミで知られる大豊神社もあるので、立ち寄ってみても。また泉屋博古館、野村美術館などミュージアムも点在しているほか、お抹茶を楽しめる喫茶店も道沿いに並んでいる。

 南禅寺に足を伸ばしてもよし。そのまま湯豆腐でお腹をみたしても。このコースでおおよそ2〜3時間となる。