Kyoto Shimbun 1999.2.3
 みちくさの景色・29

 ネコ、子ども、老人、女の子に外国人。甲斐さんが好んで撮る写真の対象である。町なかで子どもたちが群れたり、夢中になって遊んでいるそばには、どこから現れるのか、いつも甲斐さんの姿がある。この夏に出した写真集「Kids」(京都書院刊)など見ていると、写真の向こうからそんな光景が浮かんでくる。

 ヨーヨーに夢中(京都市伏見区伯耆町)

 このごろ、町中で遊んでいる子どもの姿をあまり見かけなくなった、と言っていた甲斐さんがヨーヨーで遊ぶ子どもたちを撮った写真。高速回転する新型のヨーヨーが昨年ぐらいから大流行している(そうだ)が、写真は実は23年前のものである。「そうです、そうです。そのころにもブームがあったんですよ」。30代半ばの同僚に言われて調べてみると、その40年ほど前にも大流行している。7、80歳代の方なら覚えておられるかも知れない。

 23年、65年ほど前にもブーム

 この時の流行は1931(昭和6)年ロンドンに起こり、たちまちヨーロッパを席巻してアジアからアメリカ大陸へと国際ゲーム化していった。日本では、昭和8年4月 ヨーヨーなる戯具大流行(国会警備中の警官がこれをやり退職される)と、これは「明治・大正・昭和世相史」(社会思想社)の記述。子どもだけでなく、大人まで巻き込んでのブームだった。この年、京大・滝川事件で文部省との戦いに敗れた学生たちは、校舎の2階の窓から直径一メートルほどの大きなヨーヨーをつり下げた、という。

 先の同僚の時代になると、アメリカ生まれの「マジック・ヨーヨー」が出現。これまで上下の遊びしかできなかったのが、前後左右にも自由にあやつれるようになり「犬の散歩」や「ブランコ」などのテクニックを競った。清涼飲料水のメーカーが自社マーク入りのものを販売、米のヨーヨー・チャンピオンを連れてきてキャンペーンしたのが、ブームのきっかけだった(昭和51年10月20日、京都新聞夕刊)。

 そして今回は、おもちゃメーカーの「バンダイ」が、アメリカから輸入した「ハイパーヨーヨー」を売り出して大ヒット。従来のものとは異なり「糸と本体とを結ぶ部分に特殊なベアリングを付けたり、ギヤやクラッチを内蔵することで、回転速度を上げて高度な技術を駆使することが可能」(「現代用語の基礎知識」1999 )というもので、糸が伸びきった状態でヨーヨーを維持したり、空中で回転させて大きく輪を描かせるなど複雑に組み合わせた技で、腕前を競うのだという。

 コマに回転をつけて糸ですくいあげて宙に浮かせ、股(また)の下をくぐらせたり、背中を回したりして滞空時間を競って遊んだ遠い記憶が、ちらと頭のなかを行き過ぎた。

 あのころは、隣近所の仲間のあいだで自慢しあうのがせいぜい、どこにどんな名人がいるかも知らないで夢中になった。世界大会や日本選手権もあるという今のヨーヨー・ブームは、コミック誌やテレビ番組の情報提供によって人気が引っ張られているのだという。「今時のブームは、そうしてつくられるの、常識よ」はい。

 ハイパー・ヨーヨーは、今年初めにはアメリカで、日本からいわば逆輸入された格好で大ブームとなり、この秋にはロンドンで「携帯電子ゲームなど従来のヒット商品を駆逐する勢い。クリスマス商戦の目玉になりそう」という外電のたより。1930年代の国際的ブームの発祥地ロンドンに、こんどは日本発のヨーヨー・ブームが70年ぶりに里帰り!?

 ヨーヨーはもともと、フィリピンの部族によって武器として発明されたのが起こりといい、タガログ語の「戻る」を語源にしているという。

(編集委員 中村 勝)


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