探訪 京滋の庭
退蔵院(京都市右京区)
▼MEMO

表情豊かな小宇宙 画聖が作庭

写真
絵画的な視覚効果が計算され具象性が強いという「元信の庭」
 方丈の西側にある鞘(さや)の間から屋外に視線を移す。腰壁と障子(しょうじ)で、額縁のように切り取られた長方形の視界を通して、画聖が作庭した小宇宙が目前に広がっている。

 右奥の滝に源を発した力強い流れが重厚な山石にぶつかり、黒い石の間をうねる。次第にゆるやかになった優美な小石の線が大海へと注いでゆく様が枯山水で表現されている。

 数多くの障壁画を描き、室町時代後期に狩野派の技法を確立させた狩野元信(1476〜1559)の作と伝わる。「元信の庭」のうち主庭にあたる方丈の西庭はふだんは非公開だが、今年は3月18日まで特別に公開された。

 京都を代表する風景写真家の一人、水野克比古さん(上京区)は、社寺や茶室、町家など数多くの庭園を撮影してきた。被写体として禅寺の枯山水の魅力を「大自然を抽象的に表現している面で、禅宗特有の高い精神性がにじんでいる。人工でありながら自然を強く感じさせ、光や季節のうつろいによっても、刻々と表情が変わる」と話す。

 そのうえで「元信の庭」の枯山水について、「石の素材も多様で一つひとつの表情に変化が富んでいるうえ、石の持ち味を妨げないように植栽などは低く刈り込まれている。滝の流れの表現をはじめ禅寺の庭の中では比較的、具象性が強い。その点からも、作庭者が画家だということを感じさせる」という。

 「元信の庭」が、深い精神性をたたえた単色の世界をイメージさせるのに対し、同寺のもう一つの庭「余香苑」は、豊かな色の変化に富んでいる。

 もともとは竹林だった地に造園した「昭和の新庭」は、完成以来40年近く経ち、「樹木が落ち着いて、庭石などとしっとりとなじむようになった」と同寺。広大な池やせせらぎ、水琴窟(すいきんくつ)、茶室などを回遊式に配している。春先にはシダレザクラの大木が満開となり、ツツジやサツキ、アジサイ、フジなど四季折々の彩りが園内を飾っている。庭園散策の魅力を気軽に満喫できる。

【2001年1月24日掲載】


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