探訪 京滋の庭
穴太寺(京都府亀岡市)
▼MEMO

巡礼者和む里の寺 四季豊かに

写真
多様な樹木を植栽した方丈南の庭園。四季折々、訪れるたびに表情が違う
 車が忙しく往来する国道沿いの停留所から田んぼの中の一本道を歩いていく。おちついたたたずまいの集落を抜け、10分弱の道のりを穴太寺に至るころには、時がゆったりと流れを変えたように感じる。

 西国二十一番札所の天台宗菩提山・穴太寺。仏師の身代わりとなり肩に矢傷を負った本尊「聖観音菩薩」が信仰を集め、巡礼者の訪れが絶えない名さつだ。

 この寺で、本堂の須弥壇右で人々が触れる手を静かに受ける等身大の「仏涅槃像」とともに、巡礼者の心をなごませているのが、方丈の2つの庭園である。

 入り母屋造りの方丈の内玄関をあがると、まず出合うのが、西南に連なる里山を借景にした露地風の庭。低い築地、左手に茶室。派手さはないが、古里の家に帰ったような親しさと懐かしさがある。里山に日が沈む夕日のころが、ことのほか美しいという。

 主座敷へ進む。南いっぱいに、東西30メートル、奥行き25メートルの池泉庭園が広がった。緋(ひ)毛せんに座り、その風光に包まれてみよう。

 塀を隔てて左奥、流麗な姿の多宝塔がそびえる。江戸中後期の文化元(1804)年の建造で、細かな腰組に桟瓦(さんがわら)ぶきの屋根、上層には九重の相輪を頂く。

 庭は上品ながら、印象深いこの塔さえ借景に取り込む深さがある。作者は定かでないが、時期は江戸中期の寛延年間(1748〜1751)と推察される。一九八四年に府名勝に指定された。

 搭に向かってなだらかなこう配をなす築山の奥では、ムクやカエデ、クスノキ、ヒノキが樹林を作る。手前には、池端にゴヨウマツの古木が植わる東西に長い池。池中の魚だまりでは、コイが色鮮やかな影をつくる。池の背後に石組みを配し、サツキが群生している。

 「サツキにカキツバタにと満開色の初夏もいいが、私は、夕立にサルスベリがさらさらと花を散らす真夏、木々とコケの緑に紅葉が映える秋が好きです」と住職夫人の穴穂宏子さんが言う。本堂からほんのり香の匂い。春には仁王門の修理も終わり、新しい息吹に満ちた庭が人々を迎える。

【2001年1月31日掲載】


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