探訪 京滋の庭
渉成園(京都市下京区)
▼MEMO

東山を背に描き出す 漢詩の世界

写真
樹石、池泉の配置の妙が趣を深める渉成園
 東本願寺から細い路地を東へ歩けば、仏壇の独特の木のにおいが漂う。数珠屋、法衣店、表具の老舗。門前の風情色濃い町並みを3分あまり。渉成園(しょうせいえん)は真宗大谷派・東本願寺飛び地境内地にある。

 間之町通に面した門を抜けると、正面に鋭いとげのある緑の植物が、ひとかたまり。渉成園の別名枳殼(きこく)邸の由来の枳殻(カラタチ)だ。かつて屋敷をぐるりと囲んでいた生き残りらしい。渉成園は、中国の詩人陶淵明の「帰去来辞」の一節「園日渉而成趣」から名がとられた。

 くぐり門を通ると、目の前に池が現れた。印月池という風流な名がある。池は約1万坪の庭園の6分の1を占める。水源は琵琶湖。疏水から導水する本願寺水道から引いている。真宗大谷派宗務所の毛利智見主事は「琵琶湖のブラックバスもたまに見かけます。シジミも捕れます」と話す。

 庭園は「渉成園十三景」と称される樹石、池泉、建築の配置が妙。丸太柱の茶店風の亭漱枕居(そうちんきょ)、ひわだぶき屋根のある回棹廊(かいとうろ)など、意匠の美が目を引きつける。

 中でもユニークなのが、望楼を兼ねた門、傍花閣。大胆な左右対称の構えは奔放軽快。かつては楼上から、四季折々の花を見下ろしていた。浮島と対岸をつなぐ弧状の侵雪橋の向こうに、京都タワーが突き出し、池面に姿を映す。東山連峰の借景の風情も、林立するマンションのすきまに、かすむ。作庭した江戸初期の漢詩人石川丈山の、思いもよらない風景が加わってしまった。

 歩いて五感で自然を感じるのが楽しい。花の芳香、草いきれ、小鳥のさえずり。サクラの種類も豊か。春の訪れとともに、草花が生気を帯び、園はモノトーン調の色彩から、赤や白の春色へ模様替えを急いでいるようだ。

【2001年4月4日掲載】


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