探訪 京滋の庭
京都国立博物館 (京都府東山区)
▼MEMO

石と語らい そぞろ歩く 豊かな時間

京都国立博物館
五条大橋の橋脚など多彩な石造物が並ぶ西の庭(京都市東山区)
 京都国立博物館の庭といえば本館西側の前庭を思い出す。ロダンの彫刻「考える人」や噴水池があり、バロック様式を取り入れた本館や正門と一連のモダンな景観を形づくっている。

 しかし他の庭を見ずに出るのはもったいない。実は敷地の東と西にも庭がある。博物館にふさわしく、屋外展示された石造物が、あふれる緑とともに心豊かな散策を約束してくれる。

 西の庭は多彩な石造物が楽しい。古墳時代の家形石棺、平安後期の石仏、江戸初期のキリシタン墓碑もある。中でも豊臣秀吉が天正17(1589)年に架けさせた五条大橋の橋脚と桁(けた)は立体的に組まれ、往時の面影を伝える。「初代の五条大橋のものです。それ以前は今の松原橋の位置にあり、牛若丸と弁慶が橋の上で出会ったとしても今の5条大橋の位置ではない」と解説する同博物館保存修理指導室長の赤尾栄慶さん(48)は、年号を刻む橋脚を「実に京都らしい文化財」と位置づける。

 対して「不思議な空間」と評する東の庭には、朝鮮王朝時代(1392−1910)に墳墓を飾った13体の石人や一対の石羊などが、散策路と木立の間に点在する。祖国から海を越えて持ち運ばれた石人たちは、何を思っているのだろうか。

 東の庭には藤(ふじ)棚の下のベンチや、枝垂れ桜もある。訪れる人も少なく「京都のデートスポットの穴場です」と赤尾さん。

 もっとも、いつまで「穴場」かは分からない。東の庭にある茶室「堪庵(たんあん)」の公開が今春始まった。同博物館教育広報室の田島章雅さん(28)によると、館の庭を紹介するリーフレットの企画も進んでいるという。秘めた魅力が知れ渡る前に、次の無料観覧日(26日)にでも訪ねてみてはどうだろう。

【2003年7月16日掲載】


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