探訪 京滋の庭
松尾大社松風苑(京都市西京区)
▼MEMO

鶴の池と岩 樹木の調和 神仙境の妙

松風苑
松尾大社松風苑の「蓬莱の庭」。鶴をかたどった池に大小の岩が立ち並ぶ
 不老長寿の鶴をかたどった池に、大小の岩が小さな島のように立ち並ぶ。池の周りの回遊路を巡ると、眺めが次々と変わっていく。鳥のさえずりが聞こえる中、計算された池水と岩、樹木の調和が独特の神仙境の雰囲気を醸し出す。

 松尾大社の松風苑は、1975(昭和50)年に完成した。京都を拠点に東福寺方丈庭園や泉湧寺庭園など300に及ぶ作庭を手がけた重森三玲氏(故人)が設計した。松風苑の完成と同じ年から松尾大社に勤める禰宜(ねぎ)の尾崎俊廣さん(52)は「30年近くたって、一層落ち着いた味わいになった」と話す。


 松風苑は「磐座(いわくら)の庭」「曲水の庭」「蓬莱(ほうらい)の庭」の三庭からなる。このうち、重森氏が最も気を使ったのが、磐座の庭だったと造園誌には記されている。

 磐座の庭は、高さ3メートルほど大きな岩を中心に、20数個の岩が周りを囲む上古風の庭だ。松尾大社の裏山の中腹にある「磐座」と呼ばれる巨岩を表した。磐座は、松尾大社のもともとのご神体だったとされ、重森氏は庭に神気が漂うように岩の配置に全霊を込めた。岩の周りには熊笹を植え込み、高山の霊所のような荒々しさと厳かさを出した。

 曲水の庭と蓬莱の庭は、一転して優美さが感じられる。曲水の庭は、裏山から引いた水をゆったり七曲がりさせて流し、平安風の華麗さを表現。蓬莱の庭は、鎌倉期の庭園の特徴の回遊路を池の周りに造った。上古風の磐座の庭から順に見ると、日本庭

 造園誌には「各時代の庭園美の特徴を研究しつくした上で、重森氏の教養を結集して創作された昭和の庭」とも紹介している。伝統的な作庭技法の型をふまえ、岩の配置などに現代的感覚を盛り込んだ庭は、結婚式や七五三の際に絶好の記念撮影場所になっている。

【2003年10月15日掲載】


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