探訪 京滋の庭
京都専売病院・積翠園(京都市東山区)
▼MEMO

平家の栄華 心と体を癒す場に

積翠園
不老不死の薬を運ぶ船に見立てた夜泊石(中央)が池に並ぶ。病の完治を願う入院患者たちの心を和ませる
 病棟の北側に、約1万平方メートルの庭園が広がる。その3分の1を占める池を囲む遊歩道を、朝夕、入院患者たちが散歩する。亀井欣夫事務部課長(49)は「これだけ大きな池を持つ病院は珍しいんです。緑も豊かで、患者さんの心と体のリハビリに役立っています」と、見渡す。

 庭園はもともと南隣の妙法院の境内だったが、病院が手狭になったため、50年ほど前に購入した。平安時代末期の治承期に、平清盛の長男重盛の山荘庭園「小松邸」として造られ、平家物語にも記されている「小松内府の園池」と伝わる。江戸時代の元禄期に改修されたものの、現存する平安末期の庭は数少ない。

 左回りの回遊式で、東西に広がる池には、東側に大島、西側に小島と2つの島が浮かぶ。大島の南側の水面には、「夜泊石(よどまりいし)」と呼ばれる5つの小岩がまっすぐに並ぶ。

 夜泊石とは、中国の蓬莱(ほうらい)思想に基づいて、仙人が住むとされる蓬莱山に島を見立て、不老不死の妙薬を積んで帰った宝船が港に停泊している様子を表している。病院の庭にふさわしい造りで、病の完治を願う患者の心と体を和ませている。苔(こけ)寺や金閣寺の庭園にも見られ、作庭当時の庭園の特徴とされる。

 池の周囲は7年前に改修され、車いすで通れるようになった。南側のほとりには東屋(あずまや)も建てられ、患者や見舞いに来た家族らが腰を下ろす。京都市東山区の男性患者(62)は「子どものころから遊びに来て親しみがある。歩くと気持ちいいし、見ていると飽きない。一番の楽しみです」と、ゆっくり足を進めた。

【2003年10月22日掲載】


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