探訪 京滋の庭
社家・西村家庭園(京都市北区)
▼MEMO

神官たちの 優雅な営み しのばせ

西村家庭園
平安後期に造られた庭園は、当時のまま保存されている。明神川沿いに続く社家の土塀も観光客の目を楽しませる(京都市北区)
 美しい土塀や曲水の宴を催したと伝えられる小川(曲水川)、神事の前に身を清めた井戸の跡…。上賀茂神社に仕えた神官の屋敷「社家」には、神官たちの優雅な営みをしのばせる遺構が随所に残っている。

 西村家は、社家・錦部(にしごり)家の旧宅。明治中期、東京遷都に伴い荒れ果てていた屋敷を西村家が購入し、別邸とした。上賀茂地域には約30軒の社家が現存するとされるが、公開しているのは同家だけだ。1986年に京都市の指定文化財になった。

 屋敷の前を流れる明神川にかかる石橋を渡り、門をくぐる。庭に通じる小道の両わきにマツやヒノキなどの常緑樹が並び、赤い葉のモミジが彩りを添えていた。春はツツジ、夏はキキョウ、冬は雪景色など、四季折々の風情も楽しめる。

 庭園は、1181(養和元)年に上賀茂神社の18代神主、藤木重保が造ったとされる。バランス良く配された庭石や木々の間で、同神社の神体山・神山の降臨石をかたどった石組みやみそぎに使った井戸の跡が目をひく。庭を蛇行しながら流れる小川は、明神川から水を引き、汚さずに再び同川に戻す地元独特の方式をとっている。

 現在の所有者、西村良之助さん(77)=上京区=は、19歳から数年間、結核治療のため別邸で過ごした。それだけに愛着もひとしおで、終戦直後に別邸の売却話が出た際も「文化を残したいという気持ちを捨てがたく、最終的に屋敷の保存を決断した」という。

 貴重な歴史遺産と、庭園が醸し出す雰囲気に魅せられ、年間約1万人の見学者が訪れる。庭を眺めながら座敷でうたた寝をする人もいて、西村さんは「日本的でゆったりした雰囲気が気分をホッとさせるのでは」。

 神官が神事に思いをはせた庭園は今、現代人に安らぎを与える癒やしの場になっている。

【2003年12月10日掲載】


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