探訪 京滋の庭
西本願寺 虎渓の庭
(京都市下京区)
▼MEMO

桃山の様式 巨石立てて枯れ滝表現

写真
枯れ山水の名庭とされる「虎渓の庭」(京都市下京区・西本願寺)
 「平成の大修理」が進む西本願寺の御影堂(重要文化財)。堂の南、参拝部分室の玄関から入り、歩を進めて、南能舞台(重文)と書院「鴻(こう)の間(ま)」(国宝)に向かう。伏見城の遺構とも伝えられる鴻の間の東側に開けるのが「虎渓(こけい)の庭」だ。

 桃山時代の庭園様式や手法を伝える、広さ760平方メートルの「枯れ山水」の平庭。近年の調査で作庭は江戸時代初期とされ、1955五年に「本願寺大書院庭園」として国の特別名勝に指定された。

 庭は、北東部分に2個の巨石を立てて、山にかかる枯れ滝を作っている。ここでの水の流れは10センチ大の石を並べて荒々しさを表し、下流から大海に向かう部分は小さな白砂を集めて、とうとうと流れる趣を表現。実際に水が流れているような錯覚にも陥ってしまう。

 庭の大きな特色は御影堂を借景にしている点だ。雨に濡れ、深緑に輝く木々の奥にそびえる御影堂。その大屋根を中国江西省にある廬山(ろざん)に見立てている。

 廬山は四世紀(晋代)に高僧慧遠(えおん)が白蓮社と呼ばれる念仏集団を作って以来の仏教の聖地。多くの景勝があるといい、その中の一つ、虎渓の景観を模してつくられたことから「虎渓の庭」と名付けられた。

 庭の中央にあるのが、大海に浮かぶ島のような「亀島」と「鶴島」。暖地に自生するソテツを植えている。ソテツの植栽は当時の西欧の造園手法の一つともされ、作庭者が何らかの西欧の影響を受けたとする、研究者の興味深い指摘もある。

 「拝観は月に2〜7日しか行わないので参拝者はさほど多くない。それだけにゆっくり眺める人も多い」と同寺職員。鴻の間の中から見ると、庭ははめこまれた障壁画のよう。周囲の木造建築と調和した美しさは400年の時を超え、訪れた人の心を魅了する。

【2001年6月27日掲載】


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