探訪 京滋の庭
高台寺(京都市東山区)
▼MEMO

桃山の様式 巨石立てて枯れ滝表現

写真
落ち着いたたたずまいをみせる庭園(京都市東山区・高台寺)
 目前に迫る東山の山並みを借景に、重要文化財の開山堂の白壁が、偃月池(えんげつち)の水面(みなも)に映る。池をまたぐように、桧皮葺(ひわだぶ)き唐破風屋根の観月台が配されている。

 小堀遠州の作と伝わる回遊式庭園は、国の史跡・名勝に指定される。ゆるやかにうねる小径を進むごとに、石組みや木立ち、池の岸辺や島など違った景色が広がる。豊臣秀吉夫人の北政所をまつる霊屋や茶席・時雨亭などが配され、変化に富んだ表情を見せる。

 高台寺は、春と秋の特別拝観時のライトアップで方丈の前庭に前衛的なネオンの芸術作品を施したり、毎週土曜夜には弦楽四重奏などのコンサートを開き、京都の寺院の中でも最も積極的にイベントを打ち出す。

 一般公開を始めてからわずか十二年ながらも、拝観者は年間五十万人を超え、東山界わいで有数の観光スポットとして知られるようになった。特に紅葉シーズンには、にぎやかな女性グループやカップルなどの人波で庭はぎっしりと埋まる。

 しかし、ちょうど今の時期、六月から七月上旬にかけての観光オフシーズンには、庭は落ち着いた雰囲気に包まれる。風にそよぐ木立のざわめきや小鳥のさえずりが、閑散とした庭に響く。

 「静かな空間にただ身を置いて、微妙な光や風の移ろいを感じられる。庭の風情を味わってもらうには、一番いい季節です」と執事の寺前浄因さん(43)は話す。

 回遊式の庭を巡り、拝観順路の最後となるのが方丈の前庭だ。多彩な表情を見せていたそれまでとは雰囲気が一変する。石組みや樹木がほとんどない、水墨画を思わせる簡素な枯れ山水が目の前に広がる。

 「思い思いの場所に腰をおろし、時の流れに身を任せてもらえれば」。寺前さんのお勧めだ。

【2001年7月4日掲載】


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