探訪 京滋の庭
孤篷庵(滋賀県長浜市)
▼MEMO

緑深く 石の配置 奥行き生む

写真
緑深い山の囲まれ、静かな雰囲気が味わえる庭園(滋賀県長浜市上野・孤篷庵)
 町の中心部から北東3キロの緑深い山間。車の騒音は届かず、葉擦れの音しか聞こえない静寂の中、緩いカーブの参道を登り切ると、美しく手入れされた一方で、どことなく野趣にあふれた庭が姿を現す。

 江戸時代、小室藩初代領主として付近を治め、武道、茶道に秀でた小堀遠州(1579〜1647)の没後、同家のぼだい寺として建立された。遠州の号「孤篷庵」をそのまま頂き、京都・大徳寺塔頭の孤篷庵に対して「近江孤篷庵」とも呼ばれる。

 遠州は京都の桂離宮庭園を造営するなど造園にも才能を発揮した。庭は、遠州が興した遠州流の技法を用いて18世紀初めに造られ、本堂の東に池泉(ちせん)回遊式、南に枯山水の庭園を配している。

 池泉回遊式庭園は、山の起伏を利用して造作され、琵琶湖の形を模した錦渓池(きんけいち)を持つ。かつてインドで葉を紙代わりにして写経したという池端のバイタラヨウの大木が印象的だ。

 枯山水は、枯滝の石組みと、舟に見立てた石を配する。本堂から眺めると、見当を失うほど庭の奥行きが感じられ、空間を上手に生み出す遠州流の極意が実感できる。

 庭には、イブキリンドウが生え、夏の終わりにかれんな紫の花をつける。紅葉の名所としても知られ、秋には背後の山が色づいて庭園を彩る。

 明治以降は無住となり朽ち果てたが、1965年、京の孤篷庵の命を受けた住職小堀定泰さん(90)が本堂を再建し、庭も補修した。

 県の名勝に指定され、年間約4000人が訪れる。寺の関係者は「自然の中の庭園は、すきがない京都の庭と趣が違う、とおっしゃる人が多い」と笑顔を見せる。

【2001年7月18日掲載】


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