探訪 京滋の庭
城南宮(京都市伏見区)
▼MEMO

日本庭園史 たどれる趣深い空間

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寝殿造りの神楽殿を背にした「平安の庭」は、王朝絵巻の世界へといざなう(京都市伏見区・城南宮)
 洛南の地に、今も平安のみやびをとどめる城南宮。約3万平方メートルを誇る回遊式の神苑は、「平安の庭」「桃山の庭」など五つの庭園が異彩を放つ。散策を楽しみながら、文字通り日本の庭園史をたどれる貴重な空間だ。

 変化に富んだ苑路を歩むと、「源氏物語」に登場する百種以上の植物を目にすることができる。神苑の入り口にあたる「春の山」は、ムラサキやフタバアオイなど多くの草花が彩りを添える。ほとんどが原種を植栽しており、物語の風情をより感じさせる。

 春の山から歩を進め、神殿の東に回ると、野趣豊かな「平安の庭」が目に映る。段落ちの滝と遣水(やりみず)とが静かな音の調和をつくり出す。ここでは春と秋の2回、遣水のへりで和歌を詠む「曲水の宴(うたげ)」も催される。

 寝殿造りの神楽殿を背に回して池に臨めば、平安の王朝絵巻を想起させる。「鳥羽離宮の時代に身を置いたような、みやびやかな情緒を味わえる格好のポイントです」。権祢宜の村田昌広さん(36)は、庭の見どころを強調する。

参道をまたいで南に移ると、趣はがらりと変わる。池泉回遊式の「室町の庭」は、昔のままの池に蓬莱(ほうらい)島が浮かび、荘厳な石組みを配する。西端にあるフジ棚の下に船着き場を設けるなど、遊び心にも富む。

 茶室・楽水軒を挟んで南の「桃山の庭」は、芝生の緑がまぶしい枯れ山水の庭園だ。奥の刈り込みは紀州の山並みを、芝生は海を、石組みは小島を表し、桃山時代の明るさを漂わせる

 「作庭した国際的造園家の中根金作さん(故人)は、石組みの配置に1ミリ単位で思案したそうです」と村田さん。神苑が現在の形になって40年。庭作りに8年をかけた中根さんの情熱は、今も神苑に息づいている。

【2001年7月25日掲載】


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