探訪 京滋の庭
三室戸寺「与楽苑」(宇治市)
▼MEMO

苦しみ除く癒しの空間 花の寺

写真
入り口近くに設けられた池。あずまやから、眼下に広がる緑を楽しむ人も多い
 三室戸寺の拝観受付から本堂まで続く坂道を上ると、右手に同寺の庭園「与楽苑」が一望できる。庭と参道を隔てるスギの木陰とせみ時雨が、ほんのひと時暑さを忘れさせてくれる。

 「与楽苑」の名は、衆生の苦しみを除き、喜びを与えるとする菩薩の本願「抜苦与楽」に由来する。庭は1987年、造園工事に着手。極楽浄土には色とりどりの花が咲くとされており、伊丹光恭住職は「本堂を目指してこう配の強い坂を上る『苦』が和らぐよう、花いっぱいの浄土を再現したかった」と庭造りへの思いを話す。

 造園にあたっては、参道東側に広がっていたヒノキ林約5000平方メートルを切り払った。設計は当時、庭づくりの第一人者とされた中根金作氏(故人)に依頼し、「起伏や傾斜など自然の地形を生かした庭」を主眼に、打ち合わせを重ねた。

 完成したのは、2年後の89年4月。山の水が集まってやがて大海に注ぐ様子をイメージし、入り口近くに枯れ山水と池を設けた。また、庭園内を三分割してそれぞれにアジサイ約1万株、ツツジ約2万株、シャクナゲ約千株を種類別に植え、季節の花が咲きこぼれる浄土を演出した。

 花がピークを迎える春先から初夏を中心に、年間約20万人が訪れる。最近では「『花の寺』と紹介されることが増えた」(伊丹住職)といい、近畿以外からの観光客も目立ってきた。

 陽光を浴びて輝く葉の緑に目を細めるお年寄りや、木々の渡る涼風に心地よさそうなカップルたち。訪れた人たちは安らいだ表情を見せ、ようやくたどり着いた癒(いや)しの空間を満喫している。

【2001年8月29日掲載】


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