探訪 京滋の庭
葵殿庭園(京都市東山区)
▼MEMO

自然のまま 力生き生き静と動

写真
葵殿の前に広がる庭園。琵琶湖疎水の水が絶え間なく流れ落ちる
 目の前に立ちふさがる急傾斜の岩肌を、琵琶湖疏水から引き込んだ水が一気に滑り落ちる。「雲井の滝」と呼ばれるこの滝は、途中から二筋に分かれて約15メートル下の滝つぼに流れ込む。滝の流れとは対照的に、庭園の周囲はモミジやクスの葉に覆われ、静寂に包まれている。

 都ホテルの宴会場「葵殿(あおいでん)」の南側約1200平方メートルに広がる。ホテル五階の専用連絡口から入る散策路は、木の枝や葉があふれ、両側にはこけむした木々がそびえ立つ。大木の根が下部の石を抱え込むように巻き付き、足下にはシダなどの低木がうっそうと茂る。自然の力強さがそのまま庭づくりに生きている。

 明治の造園家小川治兵衛が1933年に都ホテルの敷地内で作庭した。自然の地形を舞台にした回遊式庭園は、近代造園の礎を築いたといわれる7代目治兵衛にとって最後の作品となった。九四年に京都市の指定名勝になった。

 葵殿庭園の散策路は急な上りが続く。途中、頭上を覆うように茂っていた木の葉が開ける場所があり、左京、東山一帯の京都盆地が眼下に広がる。さらに上ると都ホテルの和風宿泊施設「佳水園」に着く。数寄屋風の平屋別館で、外国人宿泊客らの利用が多いという。ここにも岩盤を生かした特異な和風庭園「佳水園庭園」がある。治兵衛の長男小川白楊(はくよう)が手がけた作品で、親子の庭園美の競演が楽しめる。

 葵殿庭園と佳水園庭園も合わせると面積は1500平方メートルに及び、「宿泊客の多くが朝早くから散策を楽しんでいる」(渡辺民雄都ホテル常務)。思い思いに庭園内を歩き、木陰で休む老夫婦や若い女性たち。庭園の風景に魅せられて定期的に訪れる宿泊客の姿も目に付く、という。

【2001年9月12日掲載】


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