探訪 京滋の庭
法然院の表庭(京都市左京区)
▼MEMO

白砂壇が左右対称に浄域へ導く

写真
かやぶき屋根の山門と白砂壇が美しい法然院の表庭。静かな空気が辺りを包む
 東山山ろくの一角、緑が濃い鹿ケ谷にある法然院。境内にはシイや松、竹が生い茂り、静寂が辺りを包む。どこからか聞こえてくる虫の音が、心地よい。

 参道の石畳を、一歩一歩踏みしめ、かやぶき屋根の山門をくぐると「表庭」に出た。

 山門から本堂へ続く表庭の道の両側には、白砂壇が左右対称に並ぶ。砂壇は水を表し、その間を通ることで、心身を清めて浄域に入ることを意味する、という。

 振り返ると、山門が一段高い位置にあることに気付いた。「俗世間の『外』と寺空間の『内』を、結びながら区切る結界を表現しています」と梶田真章貫主(44)。秋には、かやぶきと白砂、紅葉が醸し出す風情に引かれ、大勢の観光客が訪れる。

 表庭は法然院が創建された江戸時代初期からあったが、大正時代に今の姿になった。当時の名高い京都の造園家である小川治兵衛の手で整えられた。白砂壇の間を通り、池にかかる石橋を渡る。辺りはこけむして青々とし、樹齢何百年かと思われる木々は太い根を土から浮かび上がらせている。

 庭の景色は周囲の山々に溶け込み、緑の香りが気持ちを和ませる。雨の中、経蔵の軒先に座り、庭を眺めていた男性(59)=左京区=は「緑と水があってとても心地いい。週に一度は来て一時間ほど座り、めい想したりする」と話した。

 法然院の伽藍(がらん)内には、阿弥陀(あみだ)三尊を象徴する三尊石が置かれている「方丈庭園」もある。極楽を表したいわゆる「浄土庭園」で、4月と11月だけ一般公開される。庭の奥では、東山連峰の地下水が「善気水」としてこんこんと沸き出していた。

 法然院の庭には、ムササビやキツネ、フクロウなど野生のさまざまな動物や鳥が出入りする。「山と一体になり、動物たちと共に生きる庭です。『ちょっと見て帰る』よりも、腰を落ち着かせ、心の目で命の営みを見ていってほしい」と梶田貫主は語った。

【2001年9月19日掲載】


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