探訪 京滋の庭
大角氏庭園(滋賀県栗東市)
▼MEMO

大名や公家 旅の途中にひと休み

写真
右に築山、垣根の奥には日向山を借景とした大角氏庭園。江戸時代の商家の趣をいまに伝える
 縁側に立つと、まず急こう配の築山が目に飛び込む。それを囲むように生け垣が巡らされ、落ち着いた雰囲気が漂う。やや視線を上げれば借景として取り入れられた日向山が遠くに見える。江戸時代、東海道を往来する人たちの休憩所となった大角家住宅の庭園。

 大角家は東海道に面し、街道名物の漢方薬「和中散」を製造販売する「和中散本舗」として17世紀初めに創業した。17世紀末ごろ、この地が草津宿と石部宿のちょうど真ん中に位置する「間(あい)の宿」だったため、大名や公家たちの休憩所に使えるように座敷や庭園を増築し、接客ができるだけの「小休み本陣」となった。

 近世の絵師として評価の高い曽我蕭白(1730〜81年)が、滞在のお礼に描いたふすま絵なども多く残されており、建物は1954年に国の重要文化財に指定されている。

 庭園は、かつて大名などしか使えなかった「上段の間」に面しており、小休み本陣として整備されたころの作庭。東海道沿いに栄えた商家の趣を伝える数少ない庭として、今年1月には国の名勝に指定された。

 敷地は約1000平方メートル。中央の池の周囲をめぐる池泉回遊式庭園で、池の周囲にはせり出すように伸びる樹齢300年のマツや、サツキ、カキツバタなどが植えられている。

 その池の奥には、3メートルほどの高さに盛られた急こう配の築山と、高さ1メートルほどのなだらかな築山が並ぶ。1869年、明治天皇が江戸へ向かう途中に休憩し、築山に登り景色を楽しんだという。いまでも大きな築山には道が整備され、登れば眼下にかわら屋根が広がり、垣根の向こうに、近江富士で知られる三上山を望むことができる。

【2001年9月26日掲載】


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