探訪 京滋の庭
東福寺方丈庭園
(京都市東山区)
▼MEMO

幾何学的なデザインで異彩放つ

写真
方丈南庭の石組み。林立する巨石が目の前に迫る
 よく磨かれた廊下へ一歩踏み出すと、静けさが密度を増す。左手には方丈南庭。横たわる十八尺(約5.4メートル)の長石を中心に、2メートル近い巨石が立ち並び、迫力に圧倒される。足下には渦巻き状の砂紋が、石の間を抜けて庭の反対側まで続く。鎌倉時代に創建された東福寺の境内で、異彩を放つ近代の庭だ。

 「八相庭」の名で知られる枯山水式の禅院庭園。1881(明治14)年に本堂一帯が焼失した後、昭和の代表的な作庭家の重森三玲氏が1939(昭和14)年に完成させた。方丈の四囲に、幾何学的なデザインの4つの庭を配置。各庭が見せる八つの表現を、釈迦(しゃか)の生涯に起きた8つの出来事を指す「八相成道(じょうどう)」にちなんで命名された。

 南庭の正面に進むと、とたんに視界が大きく開ける。波打つ白砂は大海。左に「蓬莱(ほうらい)」「瀛洲(えいじゅう)」など3つの島々を表す石組み、中央にも一組あり、右端には「五山」を模した築山が目に入る。あるのは石と砂と土だけだが、視点により豊かに表情を変える。東庭は東司(旧便所)の柱石を再利用し、北斗七星の形に並べた不思議な空間だ。

 西庭はサツキを正方形のタイルの様に刈り込み、モザイク状に配した白砂との対比で鮮やかな市松模様を見せる。北庭も苔と石の小ぶりの市松模様で、しっとりと落ち着いた雰囲気だが、これからは色鮮やかな季節を迎える。方丈の北を流れる小川に沿って多くのモミジが植えられ、折り重なる葉の向こうに本堂と開山堂を結ぶ通天橋が見える。

 通天橋一帯は紅葉の名所。谷間を赤く埋めるモミジを見下ろせ、散策路にも下りられる。「最も美しいのは紅葉の時期。でも禅寺本来の静けさは、他の季節でないと味わえません」と永井慶洲法務部長。見ごろとなる11月には、年間で50万人に達する参拝者の約半分が集中するという。

【2001年10月24日掲載】


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