探訪 京滋の庭
禅定寺(京都府宇治田原町)
▼MEMO

四季折々に心和らげる山寺の風情

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山寺の素朴な風景で参拝者に親しまれる禅定寺の庭園(宇治田原町禅定寺)
 茶畑や水田が広がる田園風景のなか、山すその小高い丘に建つ禅定寺。葦(よし)葺きの本堂前にある庭園では、山あいの新鮮な空気を吸いながら参拝者たちが、ゆったりとした時間の流れを楽しむ。

 平安時代中期の991年に建立され、千年以上の歴史を誇る。宇治田原に所領があった藤原摂関家の保護を受け、天台宗の寺院として大きく発展し、その影響力は周辺一帯が今も「禅定寺」という地名を持つことからもうかがい知ることができる。

 しかし、藤原家の衰退に伴って、寺は荒廃。江戸時代前期の1680年になってようやく、加賀大乗寺の月舟禅師が寺を再興し、宗派も曹洞宗に改められた。

 約500平方メートルの庭園には、ショウブやスイレンが植えられた約25平方メートルの池や小さな東屋(あずまや)などが配されている。気構えた雰囲気はなく、参拝者は自由に園内を歩き回ることができる。「訪れる人に山寺のイメージで心を休めてもらうため、四季折々の花を咲かせるよう心がけている」と久保敬童住職(48)。

 約20年前、久保住職はこの地域では珍しい八重キキョウ数株を庭園の一角で見つけた。約70株まで増やして、夏の庭園を華やかにしている。リンドウはすでに散ってしまったが、冬はサザンカが白い花を咲かせ、センリョウも赤い実をつける。こうした庭園の今の姿は、久保住職が作り上げた。

 毎月訪れるという城陽市の会社員(56)は「寺全体のたたずまいに余計な物がなく、素朴な雰囲気が気に入っている」と、いつも小一時間ほど庭園内を歩き、日々の疲れをいやす。

 本堂裏のコンクリート製防災壁には、高さ8メートル、幅45メートルの壁画「平成大涅槃(ねはん)図」が1999年に完成、見どころの一つとなっている。裏山も含めた約15ヘクタールが府自然歴史的自然環境保全地域に指定され、こんもりと茂る森林に囲まれた質素な山寺の風情を醸し出している。

【2001年11月28日掲載】


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