探訪 京滋の庭
源光庵(京都市北区)
▼MEMO

2つの窓で禅の心を身近に実感

写真
「悟りの窓」から見た庭園。心の安らぎを感じる
 静寂に包まれた鷹峯。鳥のさえずりと風にそよぐ木々の葉音が、耳に心地良い。この地は江戸時代初期、本阿弥光悦が一族と共に移り住み、工芸の技と文化を全国に発信した歴史ある場所でもある。

 ここに源光庵が創建されたのは1346(貞和2)年。大徳寺の徹翁(てつとう)国師が隠居所として開き、1694(元禄7)年には、卍山(まんざん)道白禅師が曹洞宗に改宗した。現在の本堂は、改宗時の創建だという。

 北山杉が両わきに植えられた山門を通り抜け、境内へ。書院から、庭園を眺める。標高2901メートルの釈迦谷山を借景とした庭園は、築山と亀島を配した枯山水の庭だ。庵(いおり)の裏にある稚児井は創建時、多くの人々を水飢きんから救ったと伝えられている。

 庭園は、四季折々に違った表情を見せる。春、夏は新緑、秋は紅葉が、見る者の視線に彩りを添える。「初雪が降るころには、静かな雰囲気を好む人が訪れます」と、鷹峰龍雄住職(67)は話す。厳しい冷え込みの中に身を置くからこそ、心を落ち着けて、景色を眺められるのだろう。

 源光庵の庭園を語る上で欠かせないのが、本堂にある「迷いの窓」という名の角窓と「悟りの窓」と呼ばれる丸窓だ。それぞれ縦1メートル30センチほど角窓は「生老病死四苦八苦」と、人間の苦悩を象徴している。一方、丸窓は「禅と円通」の心を表し、大宇宙へ通じる悟りの境地を表現しているという。

 「迷いの窓」の前に座り、庭を眺めてみた。角窓から見た風景は、額に収めた絵画のようだ。美しいながらも、どこかよそよそしさを感じる。「悟りの窓」の丸窓から見えるのは、もちろん同じ風景だ。それでも、角窓で感じたよそよそしさはなく、やさしい気持ちに包まれ、庭に親近感を抱いた。

 2つの窓から、切り取った庭の様子を交互に眺めただけで、気持ちに変化が表れる。禅の心が身近に感じられた。

【2002年1月16日掲載】


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