探訪 京滋の庭
正伝寺(京都市北区)
▼MEMO

比叡を借景 石を使わぬ緑の枯山水

写真
一石も使わない借景式枯山水の「正伝寺庭園」。中央には比叡山が見える
 五山の送り火の船形がある京都市北区西賀茂の船山の南ふもとに、禅寺「正伝寺」はある。庭園は、借景式の枯山水として知られる。方丈から東に開けた庭園の先には、丸みを帯びた頂上から、なだらかにりょう線を伸ばす比叡山が見える。

 閑静な住宅街を抜け、山門をくぐり参道を百メートルほど登ると同寺にたどり着く。玄関を上がり、広縁の中央に座って庭を見る。白壁に三方を囲まれ、地面は一面に白い砂利に覆われている。北白川の白川砂が使われおり、熊手で幾筋にも描かれた模様は白波の様。

 正面の壁側には、サツキやヒメクチナシなどの混生した低木樹群が丸く刈り入れられ、右から七つ、五つ、三つのかたまりになって並ぶ。「獅子の児渡し」と呼ばれる。一つずつのかたまりは、丸い石に緑のコケがむしたようにも見える。

 約110坪の小さな庭だが、手前から白と緑の色彩の枯山水、同寺を囲む木々、優雅な比叡山の借景と、三段階の空間的な広がりが調和し、一つの風景を形成する。

 一般的に、石組を主とし、水を表現するのに砂れきを用いることが多い枯山水の庭。同寺庭園の世話をしている山崎宏さん(68)は「ここは一石も使っていない。珍しい庭です」と、説明した。

 桂離宮庭園(西京区)などを造園した江戸初期の武将小堀遠州作の庭、との説もある。しかし、遠州没後六年後に同寺が現在の場所に立ったことから、山崎さんは「遠州のお弟子さんが作ったのでは」と話す

 庭のツツジは5月下旬、赤い花を咲かせ、秋には比叡山が真っ赤に紅葉する。山崎さんは「石の庭との違いは、季節と共に姿を変える穏やかさ」と言う。

【2002年4月10日掲載】


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