探訪 京滋の庭
旧竹林院(滋賀県大津市)
▼MEMO

豊かな清水 茶室には風流人集う

写真
新緑とコケ。緑の庭園を豊富な水が流れる旧竹林院の庭
 比叡山の東麓、滋賀県大津市・日吉大社の参道「日吉馬場」の両わきに、延暦寺の僧侶が隠居寺として余生を送った里坊が立ち並ぶ。大小の石を積み重ねた穴太衆積みの石垣と相まって独特の景観を醸し出す。一帯は、国の重要伝統的建造物群保存地区。その中で最も日吉大社に近い里坊が、旧竹林院だ。

 庭門をくぐる。キリシマツツジやユキヤナギの紅白の愛らしい花に囲まれながら数歩。右側を見ると、八王子山(881メートル)を借景に約3300平方メートルの庭園が広がる。日吉大社境内のスギが庭を囲む屏風のように立ち、手前にカエデの新緑、足元には一面のスギゴケが深い緑を見せる。

 山の斜面を生かした庭園だけに起伏に富む。その中に、大正時代に建てられた茶室2棟とあずまや1棟がある。これらを巡る約100メートルの山道沿いには、灯ろうや滝、飛び石がある。少し場所を移しただけで、庭の印象は次々と変わる。滝を落ち、池に流れ込む水量はいつも豊富。比叡山から流れる大宮川から取水しているためだ。

 茶室のうち草庵風の小ぶりな建物は、主人の両わきに客人が座る「天の川席」という特殊な造り。実業家の故小林一三氏はじめ多くの関西の風流人が愛用したという。

 竹林院は江戸時代中期の創建だが、庭は明治時代に資産家の手に移り、別荘になってから手が加わった「近代庭園」。2階建ての母屋は1897年の建築で、庭園もそのころ整備されたとみられる。26畳の広間があり、茶室として用いられている。

 近年まで、料亭にも転用されたが、大津市が観光拠点として整備するため1992年に購入し、一般公開した。庭は98年、近隣にある九つの里坊庭園とともに国の名勝に指定された。

【2002年4月24日掲載】


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