探訪 京滋の庭
九条池(京都市上京区)
▼MEMO

公家屋敷の雰囲気残す 貴重な場所

写真
池は市民の憩いの場。岸辺の拾翠亭は昨年、平成の大修理を終えた
 都会の騒々しさを逃れ気軽に自然を満喫できる京都御苑は、散歩の市民から観光客まで人の姿が絶えない。その南西の一角、ひときわ木々が茂るなかに九条池がある。

 摂政・関白に任ぜられる五摂家の一つ、九条家の庭園跡。池の形から勾玉(まがたま)池とも呼ばれ、小さな築山や護岸の石組みなどに往時の面影をとどめている。
 京都御苑は、東京遷都で空き家になった公家町を取り壊して整備された、多くの庭園が姿を消したなかで、九条池は公家屋敷の雰囲気を残す貴重な場所となっている。

 「兼六園をはじめ、名園といわれる庭は人の細工が目立つのに対し、九条池は料理でいえば素材そのもので、安心できる。それでいて王城の地の気品がある」。近くに住み、御苑散策を三十年来欠かさないという吉田富夫佛教大教授(66)=中国文学=の感想だ。

 もちろん、一帯は平安京の歴史が色濃く刻まれている。西の岸辺には九条家の建物で唯一現存する茶室「拾翠亭(しゅうすいてい)」がたつ。平成の大修理が昨年終わり、江戸後期に建てられた数寄屋風書院造りの美しい姿を取り戻した。池の中島にある厳島神社は、平清盛が安芸(広島)から勧請したと伝えられ、破風型の鳥居が国の重要美術品に指定されている。

 また、池は人間だけでなく野鳥にもオアシスとなっている。「冬はマガモやカルガモ、夏はアオサギやゴイサギ。それにカワセミも姿を見せる」と話すのは、環境省京都御苑管理事務所職員で、御苑の野鳥に詳しい中西甚五郎さん(41)。一度だけだがオシドリまで飛来して人々を驚かせた。

 これから夏に向かい、池にはスイレンが咲き、岸辺をサルスベリの花が彩って、憩いを求める人たちを迎えてくれる。

【2002年5月15日掲載】


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