探訪 京滋の庭
鹿王院(京都市右京区)
▼MEMO

嵐山借景 石組み古木 配して彩る

写真
嵐山を借景に、舎利殿や古木を格式高く配した鹿王院の庭園
 山門をくぐると、新緑が涼しげに木陰をつくる参道が、「く」の字に延びる。青竹や天台烏薬(うやく)が繁る景色を楽しみながら庫裡(くり)に入り、廊下を抜けると、平庭式枯山水の庭園が、目の前に広がる。

 鹿王院は、足利義満が寿命を伸ばすことを祈って建てた宝幢寺の塔所として、康暦2(1380)年に建立された。寺名は、この土地を開いた際に、野鹿の一群が現れたことに由来するという。

 室町時代の庭園は、応仁の乱などの戦乱で失われたが、江戸初期に現在の庭園が作庭され、以後、何回かにわたって整備を重ねてきた。

 二層宝形の舎利殿北側に広がる300坪の庭園は、四季折々に姿を変える嵐山を借景にして、石組みや古木を計画的に配している。

 舎利殿は、荼毘(だび)に付した釈迦の体から残った歯「仏牙(ぶつげ)舎利」を納め、毎年10月の一般公開は、参拝客でにぎわう。舎利殿の前には、室町時代から伝わる「三尊石組み」があり、釈迦を中心にすえ、脇に2人を配している。

 周りには、樹齢400年を超えるモッコクをはじめ、クロモチ、カゴノキなどの古木が植わる。これらの木々は、江戸時代の「拾遺都名所図会」にも描かれており、年輪を重ねるごとに、庭園に力強さを加える。庭の南側にある沙羅双樹は、6月下旬に見ごろを迎え、あざやかな白花が参拝客を迎えてくれる。

 吹田宏海住職(58)は、庭園について「嵐山を借景に、モッコクやモチの木を配した力強さが魅力です」と話す。庭園は1987年、京都市指定の名勝になった。寺は京福電鉄・嵐山線の駅名にもなり、寺の名前は京都人にもよく知られているが、実際に訪れたことはないという人は多いという。

 観光地・嵐山の渡月橋から歩いて15分ほどの距離だが、静かな京都を楽しみたい観光客の「隠れた名所」。参道を進むにつれて都会の喧そうはすっかり消え、参拝客を別世界へと誘ってくれる。

【2002年6月5日掲載】


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