探訪 京滋の庭
勧修寺氷池園(京都市山科区)
▼MEMO

洛東の古刹 四季折々 多彩な表情

勧修寺氷池園
氷室の池を中心に広がる「勧修寺氷池園」。豊かな自然が潤いを与える
 千百年以上の歴史を誇る洛東の古さつ(こ刹)・勧修寺は、平安前期の900年(昌泰3)年に醍醐天皇が創建したと伝わり、宮中とのかかわりが深い。境内には、明正天皇の住まいを移築した宸殿(しんでん)や後西院の旧殿だった書院など、御所から下賜された建物が並ぶ。華美さはないものの、修行や信仰の場としての寺院とはひと味違った、優雅で落ち着いた気品が寺域全体を包み込む。

 庭園の中心を成す「氷室の池」は約6600平方メートルもの広さがある。平安時代、池に張った氷は毎年1月2日に宮中へ献上され、その厚さで稲作の豊凶が占われた。

 池の中央には、緑豊かな小島があり、野鳥の楽園となっている。万葉の人々は池に舟を浮かべ、水の上から四季折々の自然の移ろいを愛でた。現在は氷こそ張らなくなったが、水が澄むこれからの季節は、周囲の木々や空が鏡のような水面に映り、庭に広がりを与える。

 池のほとりに立つと、南西に醍醐の山々、南東には東山連峰が望め、奥行きのある空間構成も楽しめる。勧修寺の筑波常遍宮門跡(67)は「周囲の山々を取り込んだ借景の妙が、この庭の魅力の一つ。寺の周囲が風致地区に指定されているので開発が進まず、1100年前の景色がそのまま残っています」と話す。

 落ち着いた宮中様式の建物と、潤いのある水辺、借景の山々の自然。三者の調和に彩りを添えるのが、水面から顔を出す植物だ。5月にはカキツバタ、6月にはハナショウブが水際を紫色に飾る。初夏からは赤いスイレンが朝の光を浴びて輝き、七月からはハスが池一面をピンク色に染める。毎年、花の絵を描きに来るという高橋顕児さん(52)=伏見区=は「特に7月と8月は、スイレンとハスとの共演が見られる。木立が水面に映る面白さもあって、絵のモチーフには最高です」と魅力を語る。季節や時間によって姿を変える庭は、世紀を越えて、訪れる人々を魅了し続ける。

【2002年10月9日掲載】


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