探訪 京滋の庭
大橋家庭園(京都市伏見区)
▼MEMO

こだわりの水琴窟と多彩な灯籠

大橋家庭園
手入れの行き届いた庭木に石灯籠や庭石がとけ込む。下りつくばい(写真中央)に水琴窟がある
 瀬戸内海の鮮魚を陸揚げしていた伏見の魚問屋の元請け大橋仁兵衛の別荘庭園で、近代日本を代表する庭師、小川治兵衛が監修して大正2年に完成した。「大漁」にかけて「苔涼庭」と、しゃれた名前がついている。石灯籠(とうろう)や庭石の眺めを楽しむ茶庭風の庭園で、1988年に京都市名勝に指定されている。

 数々の名庭園を設計した治兵衛だが、大橋家庭園には、ここにしかない特色が二つある。

 ひとつが水琴窟(すいきんくつ)。客間の縁先の手水鉢(ちょうずばち)と庭園東の下りつくばいの場所の計二カ所あり、さらにもう一カ所、水琴窟だったと思われるかめが埋められたまま残っている。

 水琴窟にひしゃくで水をうつと、石からしたたり落ちる水で最初はピンピンと琴か鈴のような音が楽しげに奏でられる。やがてリズムはゆったりとなり、心が落ち着かされる。縁先の水琴窟の音色は太くて男性的、つくばいの水琴窟の音色は高くて女性的な印象だが、四代目当主の大橋亮一さん(68)は「人によって、いろいろな感じ方があるようです」。

 京都では最も古くから澄んだ音色を響かせてきた水琴窟だが、大橋さんは昭和の終わりのころに、テレビで水琴窟が紹介されているのを見て初めて貴重なものであることを知ったという。現在では京都を代表する水琴窟の一つとして全国に知られるようになった。

 もう一つの特色が、庭園内に並べられた石灯籠。客間から眺めるだけでは分からないが、約百坪の庭園に善導寺型や春日型など趣向の異なる石灯籠が12基もある。

 「大橋仁兵衛は石灯籠や庭石を集めるのが趣味で、石灯籠の見せ方に力を入れたようです。小川治兵衛さんから『多すぎる』といわれても、頑としてゆずらず、12基並べたそうです」

 石灯籠が多いと散漫な印象になりがちだが、庭園中央の築山と松、流れに見立てたくぼ地など立体的な構成に、こけむした灯籠が見事にとけ込んでいる。

【2002年11月20日掲載】


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