探訪 京滋の庭
蓮華寺(京都市左京区)
▼MEMO

池覆う 樹木の荘厳 舟石の教え

蓮華寺
正面に池が広がり、明るさの中にも厳かな雰囲気が漂う
 薄暗い書院の入口から、庭園に面した部屋に明るい光が差し込むのが見える。開放感あふれる縁側から書院東側の庭園を眺めると、目の前に広々とした池が広がる。

 厳かな雰囲気が漂い、池を覆うほどの樹木の存在感に圧倒されそうだ。そのすがすがしい空間でのひとときを求めて、紅葉が最も美しい時期に全国から訪れる観光客は1万人にのぼる。

 「仏教における庭園は祈りの対象。経典の内容を具現化した場所であり厳格な気持ちで鑑賞してほしい」。安井攸爾住職(61)が、安易な気持ちで記念撮影に興じる人を戒める。

 比叡山のふもとにある寺は江戸時代初期、1662年の開山で、延暦寺の僧りょが創建した。庭園の作者ははっきりしないが、浄土教の思想に基づいてつくられた「池泉観賞式庭園」という。

 書院の前面に池泉が広がり、右手に船をかたどった舟石が置かれている。左手に亀島と鶴石があり、亀島の後ろには蓬莱山がそびえる。ほかの浄土教の庭園に比べればやや小規模だが、そこに表される仏教の世界にはさまざまな教えがこめられている。

 例えば舟石。「入舟」といわれる形は、理想の世界は浄土にではなく、私たちが日常生活を送る現実の世界にこそあることを伝える。秋は真っ赤に紅葉したモミジと濃い緑色のこけとのコントラストが印象的で、時を忘れたように座り続ける人たちも多い。

 本堂の裏側に続く庭園内の散策路を歩くと、左側に小さな二体の石仏が置かれている。「大日如来」と「如意輪観音」を表現しているといい、静かに庭園を歩く人たちを優しく迎える。

 さらに書院北側の部屋から見える庭は、荒々しい岩がそびえ、東側の部屋から見える庭とは趣がまったく異なる。岩の下を流れる水は江戸時代初期に開かれた水道で、池泉の水も、そこから引かれている。庭園を静かに見つめる人たちは「庭園は屋外にある仏壇」という安井住職の言葉をかみしめているようだ。

【2002年12月11日掲載】


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