受験は大人になる儀式

  入試問題前に考え抜き

   いま勉強の面白さ講義


 出口 汪さん(予備校教師・大阪府豊中市)



 みなさん、若いうちに思い切り脳を鍛えてください。「受験」は、現代社会の中で大人になるための儀式。子どもが親から自立して、自分の力で乗り越えていくものです。かく言う私も、亀岡高校を卒業後、大学入学まで三浪しました。

現代文の人気講師として、予備校の教壇に立つ出口さん(大阪市北区のスーパー・プレップ・スクール)
 中学二年の時、曽祖父ゆかりの亀岡市の中矢田町に引っ越しました。今は住宅地ですが、つつじケ丘にあった通称「あかつち山」で、友人たちを集め、斜面を滑り台にして遊んでいました。

 父が「小説を書く」と言って蔵の中にこもりきり。母は、その手伝いに追われていました。私を含む四人兄妹は放っておかれ、目が覚めるともう二時間目の時間などということもしばしば。ぼろぼろの学生服を着て、靴下を手袋代わりにするなど「変わった人間」と思われていたようです。

 亀岡中、亀岡高時代を通して集団生活になじめず、といって教師に反抗的な態度を取るでもなく、覇気のない生徒。学校にとっては、実に扱いにくい生徒だったと思います。ただ、亀高の福知正温先生だけは、何かと擁護してくれました。

 父は、祖父だった出口王仁三郎に可愛がられたといい、昔話を幼いころから聞かされました。私も高校時代、その著作にふれました。「すごい人」とは思いましたが、当時は距離をおきたいというのが正直な気持ちでした。いずれ、徹底的にその思想と格闘しなくてはならないだろうという予感はあります。

 高校卒業後、三年間、有名予備校に在籍しましたが、「これは」という講義には出会えません。参考書にもピンときません。ひとり、家で入試問題を前に、「空欄の答えは何だろう」などと徹底して考え抜きました。大学入学後に生活費を稼ぐために始めた塾講師のアルバイトが評判になりました。私に「師」と呼べる人がなく、受験勉強への固定観念もなく、逆に自分でモノを考える習慣がついたからだと思います。

 予備校教師も様変わりしました。人気を得ようと面白おかしい話で講義をする人もいます。でも私はそんな講義はしない。「勉強はこんなに面白いんだよ」ということを伝えたい。高校や大学で教えた経験もありますが、予備校は雰囲気がまったく違います。くらいつくような真剣なまなざし、私の講義が染み込むように吸収されていくのがとても楽しいのです。

 楽しいと思えるまでは勉強も基礎訓練が必要です。楽しくなれば、大学卒業後も一生勉強をするでしょう。(2002.2.24 掲載)

 でぐち・ひろし  1955年東京都生まれ。亀岡中、亀岡高卒。関西学院大大学院博士課程修了。専門は森鴎外。現在、大阪、東京の予備校の教壇に。「システム現代文」などの参考書はトータルで300万部を超す。大阪府豊中市在住。

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