Kyoto Shimbun 1998.12.28「より道スポット」

 紫織庵

 京町屋に じゅばん展示

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鮮やかな色と柄に、「じゅばん」に対する先入観を覆される

 長じゅばん製造会社社長の川崎榮一郎さん(50)が昨年7月、京都・室町にある自宅に開設した。「京のじゅばん&町家の美術館」と名乗る通り、伝統を受け継ぐ京町家のしつらいの中に、明治―昭和期の珍しいじゅばんの数々を展示している。

 長じゅばんは、今では白やピンクの無地が主流だが、第二次大戦前までは型染めが普通だった。じゅばんの展示は母屋の2階で行っており、花や黒松、御所車など、はだ着と思えないほど華やかな柄のじゅばんが並ぶ。ちりめんや錦紗(きんしゃ)織、麻のレースなど素材も多彩だ。現在では再現できない技術も、多く使われているという。

 特別展示は今月末まで「大正友禅の世界」と題し、当時のじゅばんの下絵も陳列している。伝統的な菊花などのほか、摩天楼と飛行機、ハートのマークをあしらった「アイ・ラブ・ニューヨーク」などざん新な図柄もあり、驚かされる。

 建物自体にも見どころは多い。大正12(1923)年の建築で、「関西建築界の父」といわれた武田五一が設計参与を務めた。数寄屋造りにチューダー様式の豪華な洋間を取り入れるなど、日本の新しい建築を目指した武田の意欲がうかがえる。新町通を行く祇園祭の山鉾巡行を見るテラスが、2階に設けられているのも興味深い。

 1階では、鉾町の生活の粋に触れることができる。座敷に松村景文の6曲1双びょうぶを飾り、床の間には竹内栖鳳の軸が掛かる。しつらいは季節に応じて変えるといい、町衆の美意識を感じ取れそうだ。

 開設以来約1万2千人が訪れた。「京都の着物のファンを、少しでも増やしたい」と自宅の公開に踏み切った川崎さんの思いも、徐々に浸透しつつあるようだ。


 紫織庵
 京都市中京区新町通六角上ル西側。開館時間は午前10時〜午後5時。不定休、予約制。コレクションは長じゅばん約千点、下絵約500枚。裏手の蔵で展示会が開かれることも。入場料500円。
 電話075(241)0215。
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