Kyoto Shimbun 1999.2.5「京都・より道スポット」

 湯川記念室

 思索の一端示す自筆ノート

photo
机やいす、蔵書など湯川博士ゆかりの品が並ぶ

 湯川秀樹博士(1907〜81)は、日本人で初めてノーベル賞を受賞したことで知られている。49年の物理学賞受賞は、敗戦に打ちひしがれた国民を力づけた。記念室は、博士が受賞後に17年間、所長を務めた京都大の基礎物理学研究所にある。1階南東角の部屋は所長室兼研究室だった。没後、偉業を伝えるためゆかりの品を並べ、85年から公開している。

 部屋に入ってまず目につくのは、大きな両そで机といす、それにだ円形のテーブルだ。いずれも博士が所長時代に愛用した。現在、机の上は整理されているが、当時は書類などが積み上げられていたらしい。展示された写真パネルから、そのころの様子がうかがえる。

 テーブルわきの陳列ケースには関係資料が並ぶ。旧制三高の学生時代や米国コロンビア大の教授時代の自筆ノートが、博士の思索の一端を示す。壁面の書棚には遺族が寄贈した2000冊近い蔵書。反対側の壁には、黒板が作ってある。

 黒板について、同研究所事務長の廣垣宣次さん(53)が逸話を紹介してくれた。建物を建てる際、談話室や宿泊施設などとともに、博士が黒板を各室に備えるよう求めたのだという。「研究環境を整えるため、戦後間もないころにはっきり意志表示された。さすがだと思います」と廣垣さん。

 一般の見学者はさほど多くないが、研究所の研究会に参加した内外の物理学者が、部屋の様子を見に訪れる。一昨年秋の京大創立100周年に際しては、記念行事の一会場になった。博士の存在は、今も大きい。

 日本の現在の経済危機は時に敗戦にも例えられる。静かな記念室でしばし科学者の息吹に触れ、新たな挑戦へのエネルギーを得るのも、この時代には有意義かもしれない。


 湯川記念室  京都市左京区北白川追分町。京都大の北部キャンパス、基礎物理学研究所の湯川記念館1階にある。入室受け付けは午前9時〜午後5時。毎週土、日曜日と祝日は休み。入室無料。
 同研究所事務部 電話075(753)7003。

▲観光情報▲  ▲もくじ▲  ▼つぎへ▼