京都新聞
紙面特集

新版画展 美しき日本の風景
美術館「えき」KYOTO

モダンな色彩 あふれる叙情

𠮷田博「関西 はやせ」 1933(昭和8)年

 大正から昭和初期にかけて隆盛した「新版画」。江戸期以来の浮世絵の伝統を受け継ぎながら、近代的な色彩、新時代のモチーフを取り入れて表現し、人気を集めた。京都市下京区の美術館「えき」KYOTOで5日始まる「新版画展 美しき日本の風景」展では、世界の人々を魅了した新版画を紹介する。

 浮世絵は明治末期に衰微したが、版元渡邊庄三郎が中心となり再興した。新版画の特徴は、高度な木版技術を活用し、浮世絵の風景画とは異なるモダンな感覚と色彩で、写実的な表現を試みたこと。海外向けを意識し、外国人が土産にしたという。そのため、海外では国内以上に知られ、評価も高い。ダイアナ妃や米IT大手アップルの共同創始者スティーブ・ジョブズ氏、精神分析のフロイトが愛蔵した。

 今展は平木浮世絵財団が所蔵する新版画をはじめ、近代の浮世絵など約100点を展示する。特に新版画を代表する川瀬巴水(1883~1957年)と𠮷田博(1876~1950年)を中心に取り上げる。2人はそれぞれ交通網が発達する近代を背景に日本中を旅し、水と緑に富んだ自然と四季感豊かな風景版画を手がけた。

 「昭和の広重」と呼ばれた巴水は、各地の名所を主題にした「日本風景選集」などを制作した。雪にたたずむ三重塔の赤、雨の中に傘を差す人の後ろ姿、川面に揺れる光など、しっとりした叙情があふれる。一方、水彩画から始めた𠮷田は世界中を旅し、登山を愛し、山岳風景も多い。シリーズの「日本アルプス十二題」では、穂高や黒部川など壮大な景色が描かれる。

 このほか、橋口五葉「雪の伊吹山」や三木翠山「新選京都名所」など関西ゆかりの作品、明治の風景を光と影の光線画で捉えた小林清親の近代版画を出展する。

川瀬巴水「日本風景選集 出雲 安来清水」
1926(大正15)年

川瀬巴水「元箱根見南山荘風景(5)つつじ庭に遊ぶ二美人」
1935(昭和10)年
笠松紫浪「春の夜 銀座」
1934(昭和9)年
𠮷田博「日本アルプス十二題の内 穂高山」 1926(大正15)年
小林清親「本町通夜雪」 1880(明治13)年

 いずれも公益財団法人平木浮世絵財団蔵

 ※「𠮷田博」の「𠮷(吉の字が土に口)」はお使いの閲覧環境によっては正常に表示できない場合があります。ご了承ください。

案内
■会  期7月5日(木)~8月1日(水) 会期中無休
■開館時間午前10時~午後8時 入館は閉館30分前まで
■会  場美術館「えき」KYOTO(京都市下京区、ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
■主  催美術館「えき」KYOTO、公益財団法人平木浮世絵財団、京都新聞
■入館料一般800円(600円)大学・高校生600円(400円)中・小学生400円(200円)
※かっこ内は前売および障害者手帳提示の人と同伴者1人。
■ギャラリートーク7月5日午前11時、森山悦乃氏(公益財団法人平木浮世絵財団学芸員)
7月8日午前11時半、午後2時、渡邊章一郎氏(渡邊木版美術画舗代表取締役)
※美術館入館券が必要。
【2018年7月3日付京都新聞朝刊掲載】