京都新聞:紙面特集

高麗仏画 ──香りたつ装飾美──
泉屋博古館(特集)

重要文化財 水月観音像(楊柳観音像) 徐九方筆 
1323年 泉屋博古館
荘厳華麗
あふれる気品

 みほとけの柔和な表情は気品に満ちあふれ、緻密に描き込まれた衣や装飾は目を見張るほど美しい。京都市左京区の泉屋博古館で3日から始まる企画展「高麗仏画-香りたつ装飾美-」は、高麗王朝後期(13~14世紀)に花開いた類いまれな仏教絵画の世界へといざなう。

 宮廷画家の手による高麗仏画は、王朝の衰退とともに失われ、長く忘れられた存在だった。朝鮮半島にはほとんど残っておらず、現存するのは同時代から江戸時代にかけて海を渡り、日本の寺院で保存されてきた作品が大半という。1960年代以降に研究が進み、およそ700年の時を経て注目されるようになった経緯から「遅れてきた古典」とも称される。

 何より、華麗な荘厳(しょうごん)に目が向く。泉屋博古館所蔵の水月観音像(重要文化財)は、精緻な装飾が施された薄いベールにその身を包み、すらりと伸びた右手の先には赤い糸に連なる水晶の数珠が見える。足元の水辺も珊瑚(さんご)や宝珠で彩られ、高貴さを引き立てている。

重要文化財 
青磁陰刻蓮華唐草文浄瓶 
12世紀 根津美術館

 この仏画は2013年から2年間かけて全面修理され、その過程で裏面からの彩色の詳細も判明した。会場には、高精細で撮影された画像を4Kモニターで自由に拡大できるコーナーが設けられ、絵の具や画絹の質感まで鑑賞することができる。

 日本でまとまって紹介するのは1978年の大和文華館(奈良市)の展示以来。珠玉の仏画26点のほか、画中に描かれた浄瓶など高麗の工芸品や写経を含めて約40点を並べる。

重要文化財 水月観音像(楊柳観音像)=部分
京都府指定文化財 
弥勒下生変相図 
1294年 京都・妙満寺
重要文化財 
阿弥陀如来像 
1306年 根津美術館
堺市指定文化財 
阿弥陀三尊像
13~14世紀 大阪・法道寺
案内
【会期】11月3日(木・祝)~12月4日(日) 月曜休館 展示替えあり
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
【会場】泉屋博古館(京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町)
【主催】公益財団法人 泉屋博古館、毎日新聞社、京都新聞
【入館料】一般800円、大学・高校生600円、中学生350円、小学生以下と障害者手帳持参の人は無料。20人以上の団体は2割引き
【イベント】講演会「静粛の美-高麗仏画の図像と歴史」=11月20日 午後1時半~。講師は鄭于澤(チョン・ウテク)韓国東国大学校教授。シンポジウム「ヴェールを脱ぐ観音―高麗仏画 水月観音像の修理と調査」=11月26日午後1時半~。修理、調査を手がけた関係者が成果を語る。いずれも同館講堂で開催、入館料が必要。当日先着100人まで
【問い合わせ】泉屋博古館 TEL075(771)6411
【2016年11月2日付京都新聞朝刊掲載】