京都新聞:紙面特集

京の至宝 黒田辰秋 展
美術館「えき」KYOTO

金鎌倉四稜捻茶器 1965~70年 北村美術館蔵 写真:渞忠之

人と作品の豊かな関係

 京都・祇園に生まれ、独創的な木漆工芸の美の世界を築いた作家黒田辰秋(1904~82年)。京の町、人、老舗に愛され続ける黒田の名品を集めた「京の至宝 黒田辰秋展」が9月2日、美術館「えき」KYOTOで開館20周年記念として開幕する。

 黒田は祇園の塗師屋の末っ子に誕生。独学で木工、漆工作家を目指した。20歳ごろに出会ったのが、陶芸家河井寛次郎だ。河井を介して民芸運動のリーダー柳宗悦の知己を得て、若い工人集団「上加茂民藝(げい)協團」に参加した。次第に運動から離れ、鋭敏な観察眼、自然観をもとに独自の表現を探究し始める。








工房の黒田辰秋

 京都大北門前のカフェ「進々堂」の長テーブルと椅子のセット、祇園の菓子舗「鍵善良房」の大飾棚など、京の名店から注文が相次ぐのはこのころ。これらは、87年たった今も現役で活躍中だ。映画監督黒澤明や小説家志賀直哉ら著名な人物との親交の中で、家具、椅子、茶器、飾箱、ペーパーナイフなど、幅広い木工品を手がけた。70年に重要無形文化財保持者(人間国宝)の指定を受けた。

 京都で初の回顧展となる同展は、初期から晩年まで約90点を通して人と作品の豊かな関係を見つめる。

 老舗が今も大事に持ち続ける黒田の傑作の中から、鍵善良房はきらめく貝片が端正な器体を巡る「螺鈿(らでん)八角菓子重箱」や「螺鈿くずきり用器」を出品する。

 昭和新宮殿の家具調度として制作された「朱溜(しゅだめ)栗小椅子」、黒澤監督が愛用した椅子をはじめ、茶碗から家具類まで展示。いずれも、何百年も生きた木そのものがもつ直線や稜線、木目、質感を生かし、素材と対話しながら彫り、削り、磨いた逸品たちが並ぶ。




卍文状差し
1927-29年 河井寬次郎記念館蔵
写真:渞忠之
螺鈿くずきり用器
1932年 鍵善良房蔵
写真:渞忠之
螺鈿八角菓子重箱
1933年 鍵善良房蔵 写真:渞忠之
乾漆耀貝螺鈿飾筺 1972年 個人蔵 写真:渞忠之
拭漆楢彫花文椅子(黒澤明の椅子)
1964年 豊田市美術館蔵 写真:渞忠之
案内
■会期 9月2日(土)~10月9日(月・祝) 会期中無休
■開館時間 午前10時~午後8時 入館は閉館30分前まで
■会場 美術館「えき」KYOTO(京都市下京区、ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
■主催 美術館「えき」KYOTO 京都新聞
■入館料 一般900円(700円)大学・高校生700円(500円)中学・小学生500円(300円)
※かっこ内は前売および障害者手帳提示の人と同伴者1人。開館20周年記念日の9月11日は無料。
■ギャラリートーク9月2日午前11時、青木正弘氏(本展監修者/美術評論家・元豊田市美術館副館長)
▽9日午後2時、諸山正則氏(東京国立近代美術館特任研究員)
▽10日午後2時、藤嵜一正氏(木漆工芸家/黒田辰秋に師事)
※いずれも入館券が必要