京都新聞:紙面特集

ミュシャ展~運命の女たち~
美術館「えき」KYOTO

ポスター「《スラヴ叙事詩》展」(部分)1928年/リトグラフ

「新芸術」生んだ瞳

 アール・ヌーボーを代表する画家、アルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)の作品を集めた「ミュシャ展~運命の女たち~」が14日から、京都市下京区の美術館「えき」KYOTOで始まる。ミュシャが出会った運命の女性たちに焦点をあて、リトグラフ(石版画)のポスター、油彩画、素描画などさまざまな表現方式で描かれた約150点を展覧する。

 19世紀末、ヨーロッパは産業革命後の繁栄の中にあった。安価な工業製品が日常生活に浸透するにつれ、自然美を生かした手仕事が見直されてきた。アール・ヌーボーは「新芸術」という意味の美術運動で、20世紀初頭にかけてヨーロッパ各国を席巻した。葉や花など植物の形態に似せた曲線・曲面に特徴があり、絵画にとどまらず、建築、工芸のデザインなどに取り入れられ生活全般に広がっていった。

 現在のチェコ共和国で生まれたミュシャは、ウィーンの舞台装置工房で働きながらデッサンを学び、ミュンヘン美術学校を経てパリに入り、新芸術の洗礼を受けていく。1894年、圧倒的な人気を誇っていた舞台女優サラ・ベルナールの公演「ジスモンダ」のポスターをデザインしたことで注目を集めた。翌年にはベルナールと契約を結び、彼女の衣装、宝石、ヘアスタイル、舞台装置まで手掛けて時代の寵児(ちょうじ)となった。

写真「ヴァル・ド・グラース通りのアトリエのミュシャ(パリ)」1899年

 1900年のパリ万国博覧会で成功を収めたミュシャは故国チェコに帰郷。全20点に及ぶ大作「スラヴ叙事詩」を描いたほか、母国のために無償で紙幣、切手、国章をデザインした。

 本展では、縦長の画面に、アテネを舞台にした戯曲を演じるサラ・ベルナールのポスターをはじめ、油彩画「エリシュカ」、装飾皿、挿絵原画などを展示する。多くは中心に美しい女性を描き、主役を引き立てるように、やや暗色の草花や幾何学模様を背景に据える。見る人の目を誘導する女性の目線の置き方や繊細な配色は、現代のグラフィックアートの原点ともいえる。明治期の日本にも影響を与えたアール・ヌーボーの魅力が凝縮されている。




ポスター「ジスモンダ」1894年/リトグラフ
油彩画「エリシュカ」1932年/油彩(カンヴァス)
挿絵原画「大酒呑み」1892年/グワッシュ、白色ハイライト
素描「少女と鳩」1899年/鉛筆、白色ハイライト
装飾皿「ビザンティン風の頭部:ブルネット」1898年/金属板にカラー・リトグラフによるエナメル塗装


案内
■会  期10月14日(土)~11月26日(日)=会期中無休
■開館時間午前10時~午後8時=入館は閉館30分前まで
■会  場美術館「えき」KYOTO (京都市下京区 ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
■主  催美術館「えき」KYOTO、MBS、京都新聞
■入 館 料一般900円(700円)、高校・大学生700円(500円)、小・中学生500円(300円) カッコ内は障害者手帳持参者と同伴者1人
■問い合わせジェイアール京都伊勢丹  075(352)1111
【2017年10月12日付京都新聞朝刊掲載】