京都新聞:紙面特集

生誕140年記念特別展
木島櫻谷 近代動物画の冒険
泉屋博古館

「寒月」1912(大正元)年 京都市美術館蔵



野性味に親しみ

  生誕140年記念特別展「木島櫻谷(このしまおうこく) 近代動物画の冒険」が、京都市左京区の泉屋博古館で始まる。明治から昭和にかけて活躍した京都画壇の雄・櫻谷(1877~1938年)が得意とした動物画をはじめ、近年発見されて改修、初公開される幻の名作など、初期から晩年まで代表作を含む約40点を通して画業を回顧する。

「寒月」(左隻・部分)

 櫻谷は三条室町の商家に生まれ、四条円山派の系譜を引く今尾景年に師事し、日本初の公設展「文展」を舞台に活躍した。なかでも、卓越した技術を発揮したのが動物画だった。

 タカやトラなど伝統的なモチーフの作品は、スピード感あふれる筆が才気走っている。写実や光の効果を踏まえた西洋画の表現が加わるのは20代後半から。「獅子虎図屏風(びょうぶ)」は、濃厚な毛描きで油彩のような筆触で立体感を伴う。乾いた大地に立つ百獣の王の孤高が際立っている。柔らかな毛の質感、野性味のある骨格と筋肉、それでいて親しみ深い瞳が、櫻谷の動物画の魅力だ。重んじた写生帳は5百冊に上り、その一部も展示される。

 櫻谷を一躍、画壇の寵児(ちょうじ)へと押し上げたのが07年、文展で最高賞に輝いた「寒月」だ。雪が覆う夜の竹林。さえざえとした冬の月が斜面を照らす中、1匹のキツネが歩いている。モノクロームに見える画面は、青や緑、茶など色彩が重なって豊かな階調を見せる。かの文豪夏目漱石は気にくわなかったのか、酷評したとの挿話も残る。

 新発見、未公開作がまとめて公開されるのも注目だ。約100年ぶりに見つかった大作「かりくら」は2年の修復を経て公開。秋野を疾駆する武者は、宙を飛ぶような迫力の傑作だ。制作背景や画材の調査から、京都画壇の様相も浮き彫りにする。



「櫻谷写生帖 猫」櫻谷文庫蔵
「獅子虎図屏風」(右隻)1904(明治37)年 
「かりくら」 1910(明治43)年 櫻谷文庫蔵
「孔雀図」1929(昭和4)年 櫻谷文庫蔵


案内
■会  期10月28日(土)~12月3日(日) 月曜休館 展示替えあり
■開館時間午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
■会  場泉屋博古館(京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町)
■主  催公益財団法人泉屋博古館 公益財団法人櫻谷文庫 京都新聞 BSフジ
■入 場 料一般800円 大学・高校生600円 中学生350円
※小学生以下無料 20人以上の団体は2割引、障害者手帳提示の人は無料。
■関連イベント特別講演会=11月18日午後1時半、竹内浩一氏(日本画家)「櫻谷の動物画-美しき存在」
講演会=11日午前11時、高林弘実氏(京都市立芸術大准教授)「櫻谷遺愛の絵具からわかること」
※いずれも会場は同館、当日先着100人
ワークショップ=11日午後1時半、宇野茂男氏(京都市立芸術大教授)。同館。参加費1500円。定員30人。要予約。
※いずれも入館料が必要
■連携展示櫻谷文庫(北区等持院東町)「京都市指定文化財-木島櫻谷旧邸特別公開」=10月28日~12月3日の金・土・日・祝開館。大正期の邸宅と未公開の下絵、写生を展示。中学生以上600円、小学生300円
京都文化博物館2階総合展示室(中京区高倉三条)「木島櫻谷の世界」=10月28日~12月24日(月曜休館)。京の旧家で新発見された作品を陳列。一般500円、大学生400円、高校生以下無料
【2017年10月27日付京都新聞朝刊掲載】