「発動 京都の工芸」
日常を異化する陶の仮設装置
24 陶表現作家 三木陽子さん

 配管には生活に必要な水道管もあれば、排水を流すための管もある。人が生きていく上で欠かせないものだが、多くの人は上水道は意識しても、下水管の方はあまり見ようとしない。陶による表現を続ける三木陽子さん(1963−)は水道の蛇口やホース、排水口などを日常への入口として表現、そこに犬やネズミなどの生き物をシュール(超現実的)な感覚で織り込んだ独自の陶作品を配置するインスタレーション(仮設装置)で注目されている。

 京都芸術センター=京都市中京区室町通蛸薬師下ル=の2004年の公募に選ばれて22日まで南ギャラリーで開催中の発表も「TUBE LIFE(生命管)」と名づけ、大小約30点の陶作品で空間を構成している。会場に足を踏み入れた鑑賞者は、さまざまに配置された奇妙でユーモラス、少々不思議な陶作品を巡りながら、さまざまな気づきや発見をすることになる。

 壁面の下の方から水平に伸び、途中で垂直に上へ向かう黒い管。ビニールの管と陶の管を接合し連続させたものだが、陶の部分はくるくる曲がったり、管に陶ネズミがまとわりついていたり、奇妙な犬もいる。床面に直立する三つの鉄製の扉には、犬や福助の頭部の陶製ノブがつき、それを回して開き、通り抜けると、散水用の水道やホース、トイレや手洗い場、シャワーとタオルかけなど、日常生活の水まわりの設備や用具の陶造形があり、そこにも人間の手や足、犬の頭部や下半身などが付け加えられて、ときに不気味な気配を醸し出すのだ。

 日常的でありながら非日常的。かわいいけれど怖さもある。ちょっとありえない非現実さは、この作家が好んでつくるシュールレアリスム的な陶造形のインパクトも効果となって、暗喩や寓意を帯びたインスタレーションとなる。手びねりと型、ろくろの三つを使ってつくる造形は、白か黒のどちらかの釉薬がかけられる。これもまた陰と陽、表と裏、上水道と下水道といった対比に通じている。

 陶芸の焼き物につきまといがちな火色や土味といった要素は、意識的に消されている。白と黒の釉薬も普通に市販されているものだ。三木さんの作品が、旧来の陶芸の分野よりは、現代美術の領域で評価が先行してきたのも、独特の陶表現のアイデアや空間の構成力によるところが大きい。

 大阪芸術大学陶芸専攻科を修了、陶造形の世界に進んだ三木さんは、80年代の派手でぎんぎらな陶芸のニューウエーブやアメリカ仕込みのクレイワークの余波を体験。当初は大型の増殖するトーテムポール(柱状造形)をつくったりしていたが、触覚性から視覚性へとスイッチ、いろいろな陶造形を空間に設置し、それぞれに関連させながら寓意的なイメージや物語性をこめるインスタレーションに独自の表現方法を見いだした。

 戦後の前衛陶芸も歴史となり、クレイワークの熱気も遠く去って、伝統的な世界も用途の陶芸も混然として共存、辛口に言えば模索も葛藤(かっとう)もなく微温的に過ぎる現代の陶芸。三木さんの陶表現は、無駄を排除しがちな現代社会の功利主義の不健全さや、見つめなければならないのに見ようとしない現代人の怠慢さへの批評的なまなざしも秘めて見る側を刺激する。

 写真(左)=「ホテルとかマンションとか新しい場での発表もしてみたい」と話す三木陽子さん
 写真(右)=「TUBE LIFE」から(京都芸術センター)



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