The Kyoto Shimbun

第1部 「低下」騒動の裏側で(1)

OECDショック 上位と下位、広がる格差 親の経済力が成績を左右

 午前8時40分。京都府立南八幡高(八幡市)では、響き始めたクラシック音楽を合図に、生徒がかばんから取り出した本を読み始める。

 ケータイ小説の生みの親といわれるYoshiの「もっと、生きたい…」から、「ファーブル昆虫記」「メアリー・ポピンズ」といった古典までさまざま。教室内は静まりかえり、遅刻した生徒が足音をしのばせても目立ってしまう。  同高が今年1月から始めた朝読書の光景だ。

深く考える力弱く
 発端は、就職や推薦で大学進学を目指す生徒への模擬面接で見えた「底の浅さ」からだった。

 「最近、興味を持ったニュースは?」「イラク戦争です」「何が原因だと思う?」「…」

 小田垣勉校長は「インターネット時代の今、模範解答は得意でも、深く考える力が弱っている。それは読解力低下と無関係じゃない。朝読書で少しでも、自分の思想信条をつけさせてやりたい」と思いを込める。

朝読書の光景。10分という短い時間だが、生徒たちは新しい言葉や考え方に出会う(八幡市・南八幡高)

基礎的な知識でも
  昨年12月、経済協力開発機構(OECD)が公表した学力調査で、日本の高校1年生の読解力は前回(2000年調査)の8位から14位に、数学的応用力は1位から6位に下がった。この「OECDショック」で中山成彬文科相が、新しい学力観に根ざした、ゆとり教育の路線変更を矢継ぎ早に指示し、現場に波紋を広げている。

 しかし、京都府教委の幹部は「OECD調査で問われたのは、読解力や応用力など新しい学力とされる部分。より基礎的な知識を問う国際教育到達度評価学会(IEA)調査でも低下が見られる。ゆとりか、詰め込みかという問題では済まされないはずだが…」と漏らす。

 問題なのは、学力低下の濃淡だ。府教委が1991年度から小学4、6年の国語と算数を対象に実施している基礎学力診断テストの正答率は、平均では大きな変化はない。中学生についても顕著な低下はないが、ある教員は「正答率では見えないが、進学塾で学ぶ成績上位層と、下位層との格差が確実に広がっている」と指摘する。

拡大続く受験産業
 「ゆとり教育を契機に、塾に通う子どもたちの低年齢化がさらに進んだ」と話すのは、京都市内の進学塾関係者だ。

 受験産業は少子化と共に低年齢層に向けて拡大を続け、小1コースを設ける進学塾まで現れた。中高一貫教育を掲げて洛北、西京の公立両高が付属中を開校したことも拍車をかけた。

 塾の費用を負担する親の経済力で、子どもの教育環境が左右される現実が、学校現場につきつけられている。

 大手進学塾の京都担当者は明言する。「業界は常に公教育によるしわ寄せをカバーすることで成長してきた。国の方針が揺れる限り、バブルとまでは言わないが、拡大基調は続くだろう」

 ◇

 シリーズ第1部は、学力低下騒動の裏で子どもたちの間に広がる「格差」を取り上げます。

(「学力」とは?取材班 有賀美砂)

[京都新聞 2005年3月1日掲載]

ゆとり教育
 1977年から段階的に実施され、89年には知識よりも意欲や関心を重視する「新しい学力観」が打ち出された。2002年度の完全週5日制導入によって授業時間が削減されたことで「学力低下」批判につながっている。

次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社ならびに一部共同通信社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
記事に対するご意見、ご感想はkpdesk@mb.kyoto-np.co.jp
京都新聞 京都新聞TOP